松崎の縁故者
市原が電話を掛けると『はい、柴田です』と返事があった。
「松崎千恵子さんの弟さんですか?」
『はい、そうですが』
「
『え!姉が逮捕された?すぐ行きます。それと、姉の嫁に連絡取りますから』
「お願いします」と市原は言うと電話を切った。
しばらくするとチャイムが鳴った。高山が出てみると女の人が立っていた。
「あの~
「えっとあなたは?」高山は尋ねた。
「松崎の次男の嫁の松崎理沙と申します」と女は答えた。それを聞いていた市原は
「上がってもらえ、柴田が来たら一緒に説明するから」と言った。
「どうぞ」と高山は言うと理沙は部屋へと入り、お辞儀をした。
「こちらに座ってください」と市原は指差し理沙は腰を掛けた。
それから又チャイムが鳴った。高山が出ると男女が立っていた。
「連絡を頂いた柴田道也です。妻を一緒に連れてきました」
「上げってもらえ」と市原は言い、部屋に入った二人を理沙の隣に座らせた。
「何があったか説明しますね。今日付けで松崎秋男と松崎千恵子は逮捕しました。容疑は有印私文書偽造と詐欺です。千恵子は公務執行妨害もつきますが。
松崎秋男は借用書の保証人を妻に手伝わせて署名し、一人は保証人になったことを知らせず、一人は保証人になれない人を書いていました。そして返済は勝手に署名した人に請求しろと再三言っています。返すつもりのない借金をしたというのが容疑の概要です。そして松崎千恵子は共謀の疑いがもたれています。それで、これからのことですが、柴田道也さんには二人の身元引受人になってもらいます。いま柴田弘の重要書類は指紋を取るため警察が預かっています。捜査が終わりましたら連絡しますので取りに来てください。松崎理沙さんはこの家の管理を。こちらが捜査のため家に入らなくてはならないこともありますのでそのときは連絡しますから鍵を開けてください。家の中のものにはあまり触らないように。証拠品がまだあるかもしれませんので。いいですか。」
市原の話に三人はうなずいた。
「あの、柴田弘の重要書類とおっしゃいましたが、本人には返さないんですか?」と柴田道也は尋ねた。
「柴田弘は当事者なのでね。これ以上はお話しできません。知りたいことは直接警察にご相談ください。高山、松崎理沙さんの連絡先を聞いてくれ」
「はい、理沙さん教えてください」理沙が電話番号を伝え、高山はそれを書き留めた。連絡先を確認した市原は、「今日はこれで失礼します」と言って高山と伴に出て行った。
部屋には唖然としたままの、3人が残された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます