進む警察の捜査

「高山、指紋の件はどうなった」と市原は高山に聞いた。

高山「やはり、借用書から柴田弘と須藤綾子の指紋は出ませんでした。松崎秋男ともう一人女性のものと思われる指紋は出ましたが、人物の特定はできませんでした。

市原「松崎の妻は柴田弘の重要書類を預かっているということだったな。松崎秋男の方の指紋は取れたのか。」

高山「秋男のほうは、裁判所で自署した書類から採取できました。千恵子が取れていません」

市原「柴田弘の指紋がよくとれたな」

高山「須藤さんに聞いたんですよ。車好きなので車の販売店の書類に指紋が残っているかもしれないと言っていたので、行ってみたら書類から出たんです。複数枚柴田弘の名前の書類から同じものが出ましたから間違いないと思います」

市原「そうか、松崎夫妻のことも須藤さんに来てみるか、高山、須藤さんに電話して変わってくれ」

高山「解りました」高山は須藤に電話を掛けた。


『もしもし』

「須藤さんですか、高山です。今お時間大丈夫ですか?」

『大丈夫ですよ』

「市原刑事が話をしたいことがあるそうで、変わりますね」

「もしもし市原です。柴田弘の指紋のことありがとうございました。後は松崎夫婦の指紋を入手したいのですがいい方法は無いでしょうか?」

『そうですか、参考になるか解りませんが、二人とも見栄っ張りで、ダダとかお金がかからないことが好き。奢られるのが当たり前の人ですね。人のものは自分のものと思ったり。移動はほとんど自家用車。松崎秋男はタバコを吸いますので、切れると車で買いに行ったりしていました。一緒に夫婦で行動することもあります。性格からすると食事の無料招待券とか、イベントの入場券を送って。そこで無料の飲み物を飲ませてコップを回収するとかだと採れるかもしれません』

「そんな性格なのですか?」

『ええ、それと自分は正しいと思い込む方なので、ほかの考えは受け入れません、すぐ怒り出します。逆上するとか逆切れするという言葉がぴったりくる性格です、それは柴田弘も同じですが』

「ありがとうござました。試してみます。又お電話するかもしれませんその時はよろしくお願いいたします」

『お役に立てれば光栄です。いつでもどうぞ』

「それでは失礼します」市原はそういうと電話を切った。


市原「高山、聞いたか!」

高山「協力してもらえる店を探します。後何か郊外のイベントで出来ないか。そちらも調べます」

市原「頼んだぞ。俺は荒川弁護士に調停の経過を聞きに行ってくる」

そう言って二人は分かれた。


後日松崎夫婦の指紋が入手され、借用書を書いたのが夫婦であるとの証明が取れた。

書類を整え、市原は警部に報告に行った。

市原「松崎秋男の借り入れに関して捜査が終わりました」

警部「どうだった」

市原「結論から言うと、保証人とされていた柴田弘と柴田綾子の指紋は借用書からは出ませんでした。出たのは松崎夫婦の指紋のみです、そして、松崎が保証人から取立てろと再三言っており、自分は最初から返すつもりがないことも確認しました」

警部「そうか、それなら有印私文書偽造と詐欺の疑いで逮捕状が取れるな。それと家宅捜索の令状も」

市原「はい、あ、警部。逮捕状は松崎秋男だけにしてください。松崎千恵子からは聞きだしたいことがあるので。その後で」

警部「解った、用意しよう。用意ができ次第松崎秋男を逮捕しろ」

市原「はい!手配いたします!失礼します」

市原は手配をするために警部に一礼すると席を離れた。

それから松崎秋男を逮捕するための用意にかかった。

しばらくすると、係の者が松崎秋男の逮捕状と、家宅捜索の令状を持ってきた。

市原は鑑識や複数の警官との打ち合わせを済ませ、松崎秋男の逮捕へと赴いた。




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