保証人は虚偽

山田は頭を抱えて、課長に報告に行った。報告を受けた課長は、

「なんだと、柴田弘は支払い拒否、そして柴田綾子は離婚しているだと」

「そうです、綾子様からどうして結婚当時の名前が保証人として載っているのか、ありえない話だと言われました」

「これは、もう少し話を聞く必要があるな。事によっては調停に持ち込まないといけないかもしれない」

「え、そんなに大事なんですか」

「考えてもみろ、保証人の名前と住所を確認せず虚偽のもので借用書を作っているんだぞ、借用書自体が無効となったらどうする。こちらとしては松崎が不正を働いて借入れしたことを証明して、取り立てるしかなくなるんだぞ」課長は語気を強めて言った。

「いい、後は俺がやる。お前では役不足だ、綾子さんは電話に出てくれたんだな」

「はい、後で上のものに相談して掛け直しますと言ってあります」

「そうか、そこはちゃんとやったんだな。後、借入人と保証人の身分の確認書類を揃えて持ってこい!」

「はい、解りました」山田は指示を受け一礼をすると書類を探しに行った。

山田がいなくなると、課長は「何とも面倒なことになりそうだ」と呟き他の仕事を始めた。

しばらくすると「書類を持ってきました」と山田がやって来た。課長は目を通していたがふと疑問に思った。

「借入人は揃っている。柴田弘の書類も揃っている。柴田綾子は何もなし。柴田弘が揃ってる?おい、山田、柴田弘は保証人のこと知らないと言ったんだよな」

「はいそうです、自分は払う気はないとも言ってました」

「それなのに書類は揃っている、それになぜ柴田綾子の書類がないのに保証人にできたんだ」

「夫婦だから、と聞いています。柴田綾子は相続して金を持っているからとゆうことでした」

「そんな甘い理由なのか、まったく法的には理由になっとらん。と言うより、本当に松崎が不正を働いたことにしないとこちらの立場が危うい、まずは綾子さんに詳しい話を聞いてみるか、そこに糸口がありそうだ」そう言うと課長は電話を掛け始めた。

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