第4話寿金融商事
「おい!山田!松崎秋男の貸し付けの件はどうなっている!」言われた山田は慌てて課長のところへ行った。
「何回か連絡入れているんですが、電話には出ないし、督促状とかも出していますが、連絡がありません。一回家まで行ってみたのですが、鍵がかかってましてチャイムを鳴らしても誰も出てきませんでした。新聞は溜まっていませんでしたが郵便がそのままになっていたようでした」と山田は答えた。
「もうだいぶ期日も過ぎているし、保証人には連絡とったのか?」と課長。
「いえ、借入人に連絡を取れないうちから、連絡するのもどうかと思いまだしていません」
課長は借用書の明細のファイルを開き保証人の欄を確認すると
「保証人の姓と住所が一緒だから連絡取れるだろう。一つは
「解りました」山田はそう答えて自分のデスクに戻り借用書を確認した。そして一人目に電話を掛けた。
ところがなかなか電話に出ない。「留守か?」と思っていると『もしもし』と不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「柴田弘さんの電話で間違いないでしょうか?」
『そうだが、あんた誰、何の用?』
「
『松崎が?保証人の話など聞いてないぞ。俺は払うつもりはないから、本人に請求するんだな。昼寝の邪魔しやがって、またかけてきたら只では済ませないからな』
「あ、お待ちを」と山田が返す言葉を言うまでもなく電話は切られた。
松崎さんのことを知っているようだったが、返済拒否か。
えっともう一人。住所は同じだけど携帯だから本人が出てくれるだろう。と、山田は次の人に電話を掛けた。
『はい、どちら様でしょうか?』
「
『柴田?それは私の離婚前の姓ですが、どうゆうご用件でしょうか?』
「え、離婚なさっている?柴田弘様と!」
『ええ、数年前に離婚しましたよ。今は姓も住所も変わってます』
「えっと、松崎秋男様はご存じですか?」
『松崎?ああ、柴田弘の姉婿ですね、それがどうかしましたか?』
「実は松崎秋男様が当社からお金を借りてまして、その保証人に柴田綾子様の名前がありましたので、お電話したんです」
『名前が柴田綾子で、住所は柴田弘と一緒になっているということですか?』
「そうです。御夫婦で保証人になられたと聞いています」
『契約日はいつですか?』
「20○○年、6月29日です」
『それだったら私が保証人になるってあり得ませんね、私、その数年前には離婚してますから、もし私が保証人になることを承知しているのであれば、そこの名前と住所は今のものになっているはずです。保証人の確認をされたんですか?』
「え!すみません私では判断付きかねますので、上のものに相談してまたかけなおします、ご迷惑をおかけします」
『そうですか、きちんと説明してくださいね、特に私の結婚していたころの名前が保証人として使われたこと』
「解りました。いったん切らせていただきます」そう言って山田は電話を切った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます