第2話 帰宅

1ケ月ほどのクルージングを終え、二人は家へと帰ってきた。

千恵子がカギを開け「ただいま!」と家に入る。秋男は郵便受けから新聞と郵便を取り出して後に続いた。

千恵子は窓を開け部屋の空気の入れ替えをしている。

秋男は新聞(今日から届くように申し込んでいた)を机に置き、ソファーに座って郵便を確認した。ダイレクトメールが主だったが、一つ貸金業者からの書類が来ていた。千恵子に見つからないように秋男はそれを引き出しに放り込んだ。

「督促状だろうな。見たって払えないし、保証人に返してもらわないと使ってしまったからな」と秋男は呟いた。

冷蔵庫を覗いていた千恵子が、「何もないから買い物に行かないと夕飯食べられない、お茶でも飲んで一休みしてからスーパーに行きましょう」千恵子は言いお湯を沸かし始めた。

「そうだな」秋男は答えて、スマホの電源を入れ履歴を確認していたが、貸金業者からの着信が何回もあるのに気がついた。あいつら相当焦ってるのか、電話に出ないようにしないとな。まあもし出ても「使ってしまったから保証人から取立ろ!」としか言えないが・・・・。そう考えていると、千恵子がお茶を持ってきた。

千恵子もソファーに座るとラインで、息子と娘に帰宅の報告とお土産がついたら連絡して渡すと入れたようだ。数回着信があり、千恵子はその対応に忙しそうにしていた。

落ち着くと弟妹への報告。そして「あとは弘だけど、どっちにしても様子を見に行かないといけないから、先にスーパーに行った方がいいかしらね、電話に出ればいいけど、寝てるのを起こすと機嫌が悪くなるしどうしよう」と千恵子は言った。

「一応買い物に行って、夕飯作って明かりがついたら持って行ったらいいだろう。本当に世話になっているというのにこっちが気をつけないといけないなんてな」と秋男。

弘の家と、秋男の家は段差はあるもの裏表で立っている。中まではお互い見えないが明かりがつけば起きているのは解る。

「本当よ、家事が何もできないのに離婚するし、この歳になって弟の世話をするとは思わなかったわ。とにかくスーパーに行きましょう」と千恵子が言い、秋男は車のキーを取り出した。

スーパーで買い出しをして、家に帰ると、千恵子は夕食を作り始めた。

秋男は弘の家に明かりがついたことに気がついた。「おい、明かりがついたぞ」と叫ぶ。

「そう。それならおかずと汁物を持って行ってくるね」と千恵子は言い料理を取り分けると弘の家に向かった。

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