第2話 作戦会議前日

 色素の薄い青髪の少年。魔王アリエス・オルカは地上を歩いていた。飛ぶこともできるが英雄に見つかりかねない。

 見つかっても返り討ちにするだけなのだが。


 アリエスは武具店で待ち合わせをするため向かっていた。

「すみません。ちょっとお話聞かせてもらっても?」

 にっこりと分かりやすい笑顔を浮かべた青年がアリエスに話しかけた。

 よろいを身につけ、背中につるぎを背負うその男は英雄だ。

「、、、はい。」

 無理に抵抗しても怪しまれるだけ。


「では、こちらへ」

 英雄はそう言うとアリエスを暗い路地に連れて行く。


「やっと、見つけたよ」

 突然様子が変わる英雄に驚いた顔をしてみる。

「お前があおか」

 英雄がにんまり笑ってアリエスのヴィラン名を口にする。

その時アリエスの後ろからもう2人英雄が現れた。

「逃げられないぞ」

 後ろの1人が言う。

「はぁこんなのなら外出なきゃよかった」

 アリエスがそう言って溜息をつく。

「ついでに基地の場所を吐いてもらおうか?」

「教えてあげてもいいけど、お前等死ぬよ?」

 アリエスが眠そうに言うと英雄が眉を引き上げた。

 アリエスが手を空にかざす。空から光が漏れ出し、アリエスの手元に落雷の音と共に杖のようなものが落ちてきた。

「【神器】『雷霆ケラウノス』」

 アリエスが呟くとそれは輝きだした。

「バイバイ」

 その一言で英雄は焼け焦げた。


「おかえりなさいませ。碧様」

 アリエスが地下に帰ると礼儀正しく礼をする灰桃髪の少女がいた。彼女の名は『メリー・ルイゼ』ヴィラン名は『百恵もも』だ。アリエスのヴィラン名は碧だ。

「ただいま」

 アリエスはその少女に優しく言う。

 

 オリュンポスの12人はさほどの上下関係はない。アリエスを碧様と読んでいるくらいだ。理由は尊敬しているから。


「おかえり。碧様」

 もう1人。コーヒーを飲みながらあいさつする白髪の少年がいた。

「ただいま。戻ってたのか」

 アリエスがそう聞くと白髪の少年がこくりと頷く。彼は『ハルメス・アクロポリス』ヴィラン名は『はく』だ。


 ハルメスはあまり地下に来ない。海に住んでいるからだ。オリンポスのメンバーは全員が同じ場所に住んでいるわけではない。

 ハルメスのように地下以外に家があるものも数人いる。

 

「メリー」

「はい。なんでしょう」

 アリエスがメリーを呼ぶとすぐに返事がした。

「明日、広間にみんなを集めてくれ」

 そう言うとアリエスは階段を降りていく。

「碧様はどこへ?」

 メリーが呼び止める。

「着替えに」

「手伝いましょうか?」

「遠慮しとく」

着替えまでも手伝わせたら何もできなくなってしまう。それと、、、あれを見られても困るしな。そう思いながら、アリエスは自室へと向かった。



next→3話「地獄の作戦会議」

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