第179話 2031年 戦力確認
大陸東部
日本国 新京特別行政区
大陸総督府
年が明けて2031年。
新体制となった大陸総督府では、佐々木洋介総督が新京駅から王都ソフィアに向かう汽車の中で、秋山首席補佐官から現状の説明を受けていた。
「我が国の人口は現在104658900人。
昨年の出生数は1189000人に回復はしていますが、今だに死者が生者を上回っています。
そのうち大陸の日本人人口が900万人。
本国の人口は遂に1億人を割りました」
「遂に来るべきところ迄来たという感じですな。
しかし、人口ピラミッドは健全化しているから、高齢者が順当に減っているということですな」
佐々木総督の言葉に秋山首席補佐官は頷く。
「我が国の人口減少は歯止めが掛かっておりませんが、他の地球系独立国、独立都市は産めよ増やせよと微増を達成しています」
「もともと子供自体少なかった筈なんですけどね。
ハングリー精神の差かな?」
秋山首席補佐官は、飲み込みのいい新総督に満足しつつ、席に座る。
「次に自衛隊並びに武官戦力の配置を説明させて頂きます。
川田次席補佐官、よろしくお願いします」
「はい、僭越ながら説明させて頂きます」
まだ若い川田次席補佐官が、がっしりとした身体で立ち上がり、プロジェクターの前で部隊の配置を表示させる。
本来なら自衛官の誰かが説明するべきなのかもしれないが、新任の大陸東部方面隊総監穴山友信二等陸将に気を遣って、補佐官側で説明することになった。
「いや、勉強してきたから出来るよ、説明」
と穴山陸将は語るが忖度が働いた結果だった。
だからと言って新任の次席補佐官の川田に説明させるのはどうか、という意見も有ったが川田次席補佐官は溢れる熱意でそつなくこなしていた。
「まずは東部沿岸9都市」
福原市
・第16特科連隊
神居市
・第16師団司令部
那古野市
・海上自衛隊地方隊
第16護衛隊
護衛艦『くらま』『 しらね』『いそゆき』
第5護衛艦隊(準備中)
第5護衛隊
護衛艦『むらさめ』『はるさめ』『ゆうだち』『きりさめ』
特別警備第6中隊
・陸自 第6地対艦ミサイル大隊
・海上保安庁
第13管区
SST第13小隊
新京特別行政区
・警視庁SAR連隊(大隊規模)
第1機動隊
第2機動隊
・陸上自衛隊大陸派遣隊総監部
第6教育連隊(冬戦教含む)
中島市
・航空自衛隊第9航空団
基地警備第9中隊
・国境保安庁
中島国際空港警備隊
陸自 水陸機動大隊
古渡市
・第16即応機動連隊
福崎市
・第33普通科連隊
稲毛市
・第50普通科連隊
西陣市
・第16後方支援連隊
「随分、増えたものですね」
「これでも主要な戦力に絞ったのです。
鉄道連隊、鉄道公安隊、調査船『しらせ』や公安調査庁の実働部隊は省いています」
鉄道関係は人員を各所に分散させているので、仕方が無かった。
調査船『しらせ』は戦力には数えられず、公安の実働部隊は公的な資料には載せれないのは、公安調査庁出身の佐々木にもわかっていたので、追及はせずに次を促す。
「続いて東部中央3都市です」
浦和市
・第17師団司令部
・第17即応機動連隊
鯉城市
・第34普通科連隊
・第17特科連隊
杜都市
・第51普通科連隊
・第17後方支援連隊
「東部中央都市は沿岸都市の倍の人口となっている為、陸自二個連隊に相応する戦力を駐屯させています。
第17師団の管轄区域の杜都市の植民完了が年内の夏には終わります。
東部北方面に建設中の沢海市には、第18師団司令部直轄部隊、第35普通科連隊が先住して、建設の助力となって貰っています。
また、王都ソフィアでも第18即応機動連隊が睨みを効かせています」
「なるほど、沢海市と他二都市の植民完了に伴い、新京道としての自治体の成立と総督府の移転の準備が私の役割になるわけですか。
楽な仕事ではなさそうですね」
秋山首席補佐官が再び立ち上がり
「総督閣下におかれましては、万全のサポート体制を取らせて頂きますが、大陸の情勢は複雑怪奇にして、遅れを取ることが多々あります。
我々の要として、構えて頂ければ幸いです」
「私は全員の力を必要としている未熟者です。
各々の役割を十全に果たし、国民に貢献できるよう頑張りましょう」
佐々木の信奉者たる川田次席補佐官は、感激した顔を隠さないが、他の幹部達の感触も悪くないと感じていた。
公安調査庁時代に人間を観察、分析してきた経験は伊達ではない。
「つ、続きまして、外地戦力になります。
王都ソフィアの18即機連もそうですが、拠点となる領邦に分屯地を作り、先遣隊を派遣しています。
先遣隊は陸自を主力に三自衛隊や警察、海保、国保、公安他、関係省庁から人員を派遣し、出先機関として活動できるようになっています。
規模としては200人体制で、管轄地域で変事が起きた際の対応や情報収集、本隊到着までの準備が主な任務となり、空自の警戒隊レーダーサイトも置かれています」
大陸中央 マッキリー子爵領
第4先遣隊
大陸中央 天領トーヴェ
第5先遣隊
大陸南部 アンフォニー男爵領
第6先遣隊
大陸中央 天領マディノ
第7先遣隊
大陸中央 旧皇都アウストラリアス
大陸南部 天領イベルカーツ
第9先遣隊
大陸西部 エジンバラ男爵領
第10先遣隊
大陸北部 デルモント男爵領
第11先遣隊
大陸中央 レキサンドラ辺境伯領
第12先遣隊
「第1と第2は解隊済みです。
龍別宮町や吹能羅町に分屯していましたが、現在は両町の分屯地管理小隊や地方協力本部になっています」
「遠いと管理や指揮も大変でしょ」
「はい、東部や中央は近隣に上位部隊がいるからいいんですが、残りの三地域は在外駐屯地管理小隊も含めて課題となっています。
特に南部には1000名近い隊員が、配備されていますので南部混成団司令部を設置しています」
今までもそうだったのだが、今回は佐々木総督や穴山陸将の就任に伴い、急遽命名された部署、部隊も多く、一部には混乱を招いていた。
「在外駐屯地は有事の際に自衛隊並びに多国籍軍の援軍を受け入れる整備、管理を行うものであり、通常は自衛隊一個小隊と各独立国、独立都市の連絡官が派遣されています」
今の説明に有った在外駐屯地管理小隊も表示される。
高麗民国 百済駐屯地 第1駐屯地管理小隊
北サハリン共和国 ヴェルフェネンクス駐屯地 第2駐屯地管理小隊
華西民国 新香港駐屯地 第3駐屯地管理小隊
呂宋市 呂宋駐屯地 第4駐屯地管理小隊
サイゴン市 サイゴン駐屯地 南部混成団司令部兼務
スコータイ市 スコータイ駐屯地 第5駐屯地管理小隊
アルベルト市 アルベルト駐屯地 第6駐屯地管理小隊
ドン・ルミソノ市 ドン・ルミソノ駐屯地 第7駐屯地管理小隊
ブリタニア市 ブリタニア駐屯地 第8駐屯地管理小隊
ガンダーラ市 ガンダーラ駐屯地 第9駐屯地管理小隊
エウローパ市 エウローパ駐屯地 第10駐屯地管理小隊
アル・キヤーマ市 アル・キヤーマ駐屯地 第11駐屯地管理小隊
「基本的に自衛隊の戦力は以上となります。
他に特筆すべきは、各独立国には外務省警察警察署が、独立都市には外務省警察派出所が設置されているくらいでしょうか?
保安官事務所は在外日本人街には概ねあります」
「いや、私が移民してきた頃に比べると増えたものだね。
アウストラリアス王国陛下への謁見には、どこを頼れば良いかも理解しました。
穴山陸将も謁見に参加ですから、礼服の新調を忘れずに」
自衛隊の場合は礼服ではなく、礼装と呼ばれる。
現在の礼装は19式礼装と呼ばれ、
地球人側が皇国との戦争に勝利した際に新調されたものだ。
第1種礼装は甲と乙の2種類があり、第1種礼装甲は、第1種礼服に礼服用階級章及び礼装用飾緒(陸将補以上)、白手袋を着用する。
厄介なところは大陸では略綬ではなく、、勲章・記章の佩用を求められている点だ。
じゃらじゃら重くて仕方がない。
価値観を等しくする地球系独立国、独立都市の間とでは必要が無かったが、日本とアメリカ以外は早々に裏切って、この文化に馴染んでいる。
「国王陛下との初謁見には、新調したもので無いと失礼と宮内省に言われまして、大急ぎで仕立てました。
樺太は気楽な場所だったんですが、やはりこちらは違いますなあ」
宮内省は日本人貴族や海外の国に王侯貴族が増えたことから、彼等の儀礼的なことも司る為に宮内庁から格上げされた。
外務省の方針とは度々ぶつかり合い、防衛省のやり方にも儀礼的なお小言を付けてくる厄介な組織だ。
「まあ、郷に入れば郷に従え、大陸での先達のご指導は甘受しましょう」
大陸総督府の新体制の初回会議は、佐々木洋介新総督の言葉のもと、和やかに締め括られた。
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