第14話:依頼の準備

「じゃ、これからよろしく頼むぜ」

「まだ決まったわけではないですがね」

「あ、そういやそうだったな」


 彼はそう言って面白そうに笑った。

 ……コイツら本当に初対面か?


「それで、名前を訊きたいんだが、いいか?」

「ああ、俺はライツ。ただのライツ。銀級の冒険者だ」


 彼はそう自己紹介をした。


「俺は――」


 と、そうして俺も自己紹介をして、ミレイルさんもレイラルも自己紹介を終えた。


 そして、その頃には周りの目線も、かなり落ち着いてきていた。


「そういえば、ライツさんだけ銀級ですね」


 すると、レイラルがライツさんの方に話しかけた。


「……そういやそうだな。つか、それ普通言うもんじゃねぇだろ」

「気づいてしまったんですからしょうがないでしょう」


 レイラルは表情を変えずにそう言った。


「俺ももう少ししたら金級だったんだがなぁ。そんなところでパーティーから追い出されちまってな」

「まあしょうがないですね、これからはパーティーの一員として、一緒にランクを上げていきましょう」


 すると、レイラルがライツさんの肩をぽんぽんと叩いてそう言った。


「だな。よろしく頼むぜ」

「ええ、よろしくお願いします」


 ……なんだか早速意気投合しているように見えるが、変人同士ウマが合うということなのだろうか?


「お二人、滅茶苦茶めちゃくちゃ早くに仲良くなってますね……」


 ミレイルさんが二人を見てそう言った。

 うん、俺も同感だ。


「ん? まあな。俺は割と誰でも話せるタイプだからな」


 ライツさんは頭を掻きながらそう言った。


「私は、ここのパーティがまだメンバーを募集していたパーティーだったものですから、これ幸いと思って話しかけただけですよ」


 レイラルは、当然、と言いたげな表情でそう言った。


「……相性は良さそうだけどな?」


 俺は思わずつぶやく。


「まあいいや。それで、レイラルは大体魔法使いとして後衛だろう。ミレイルさんは同じく後衛で支援や回復。それで――ライツさんは剣士に見えるが、どうやって戦うんだ?」

「……あれ? 私だけさん付けなし?」


 と、横からそんな呟きが聞こえてきた。

 ……意識してなかったが、そういやそうだな。


「す、すまん。無意識にな」

「まあ、いいですが……」


 少し不服そうに腕を組みながら、レイラルはそう言った。


「お前ら、仲いいな」

「……ライツさんとレイラルも大概だろう」

「はっはっは、確かにそれはそうだな!」


 本当に飄々ひょうひょうとしている人だな……


「それで、戦闘スタイルはどうなんだ? 教えてくれると助かる」

「ああ、そういや訊かれてたな。んでまあ俺は、基本は剣だが、魔法も使う魔法剣士みたいなヤツさ。特に、魔力を巡らせての身体強化もそうだし、魔法での身体強化もやれる。剣での戦闘のサポートに魔法を使うんだ」


 すると、ライツさんはそう言った。

 なるほど、自己完結型の戦闘スタイルか。


 前線が得意だろうが、中衛も十分にやれるだろう。

 そう考えると、前衛は俺、中衛はライツさん、後衛はミレイルさんとレイラルで、はからずもちょうど良いバランスのパーティーになっているのかもしれないな。


「なるほどな」

「あ、あとギフトは『魔法使い』だ!」


 すると、ライツさんはキメ顔でそう言った。


「……魔法、使い?」

「……魔法使いですか?」

「魔法使いは嘘でしょう?」


 三者、疑問の声が漏れる。


「まあ俺の持ちネタみたいなもんさ」


 彼はおどけた様子で笑ってみせた。


「ギフトは魔法使いだが、その魔力上昇効果を利用してるのさ。もともと、剣の師匠が居てな。まあまあ小せぇ頃からやってたんだが、急に魔法使いなんてなっちまったもんで、じゃあ魔法剣士やろうって思ったのさ」


 彼は次に解説をしてくれた。

 なるほど、そういうことだったのか。


 十六歳になると、もらえるギフト。

 それ以前にも、剣術の訓練をしていてもおかしくない。

 ライツさんの出自は知らないが、親が騎士団所属だったりすると、そういうことも多いしな。


「あー、なるほどな。だからそうなのか」


 元々の才能と違うギフトを得ることも、結構よくあることだ。


 しかし、魔法使いというと、職業系ギフトだろう。

 それらは、とりあえず名前に似た職業になれば様々な恩恵がもらえるもの――らしい。

 そう考えると、恩恵を最大限受けられているとは言えないだろう。


「確かに、そういうことなら納得は行きます……依然としてインパクトは強いですが」


 レイラルは顎に手を当ててそう言ってから、最後にそう付け加えた。


「そうだ、私とデイスさんの戦闘スタイルも話さないとですね。少し特殊ですから」

「確かにそうだな、俺は――」


 と、俺のギフトと、ミレイルさんのギフト、そしてそれに付随する戦い方の話の概要を行った。

 あとは、俺のギフトが容易に使えないことも話しておいた。

 単純に制御が難しいし、魔物を跡形もなく粉砕してしまうから使えないのだと。

 ――怖がられる、なんて話は深堀すべきではなかっただろう。そう考えた。


「なるほどな。そりゃかなり欠点を補えてる、良いコンビじゃねぇか」

「ですね。話を聞く限りは、相当のバフなようですし、かなり期待できそうです」


 レイラルは顎に手を当ててそう言った。


「というかデイスさんのギフト、理性を失って強くなるとかカッコいいですね。ほらアレですよ、封印されし力! 的な」


 レイラルは、なんだか面白そうに笑いながら決め顔でそう言った。


「……そうか?」


 その言葉に、ライツが心底疑問そうに訊いた。


「分からないんですか?」


 レイラルも、怪訝そうな表情を浮かべて言った。

 全然話が噛み合ってないな……


「それにしても……カッコいい、か」


 俺は呟いた。

 カッコいいことなんてないと思うがな。


 こんな怖がられてきたギフトが、そんなわけはない。


「どうしました?」


 レイラルは俺の顔を覗き込んで、心配そうに言った。


「いいや、なんでもないさ」


 俺は鼻を鳴らして答えた。

 俺のその答えに、レイラルは眉をひそめた。


「じゃ、そろそろみんなのことも分かっただろうし、依頼にでも行くか!」


 そして、俺は立ち上がってからみんなにそう言った。


 それは、確かにちょうど良い頃合いだったというのもそうだが、今の会話から逃げるためでもあった。


「分かりました」

「了解」

「ですね、行きましょう!」


〜あとがき〜


 あ、デス・ストランディングはとりあえずストーリーが終わりました。

 これからは執筆に集中ぅ……できるといいですね(希望的観測)


 果たして、毎日投稿はいつまで続くのか⁉

 ……バカなこと言ってないではよ書けって話ですね、ハイ。


 ともかく、次回もお読みいただけると嬉しい限りです。よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る