第16話

 ―――電波先輩!!!!

 ん?

 クルミか?

 おれはなんぜ、うずくまってるんだ?

 なんか腹に打撲みたいな痛みがある。

 「-電波先輩!!!! バカみたいな顔してますよ!!!!!」

 「うるせえ」

 そうだ。おれ達は《東ライダー》の撮影をしていたのだった。

 旧校舎の物置で発見したピッチングマシーンを使った戦闘シーンを撮っていて、それの球を腹で受けたのだ。にしても意識が飛ぶほどって、、、。

 「何キロの球だよ……」

 「えっと……160って書いてます!!!!」

 「死ぬわ!!!」




 去年の春、山羊クルミが入部した。

 それによって、映像部はおれ-村方天馬と、山羊クルミの二人となった。

 我々は10月にある文化祭に向けて、映画を撮っていた。それより以前の生活は語るまでもない。

 東ライダー

 出演 村方天馬 山羊クルミ。

 ジャンル 正義の味方 特撮

 内容 東川高等学校最後の自転車通学者である香港健は東ライダーとなり、悪と戦う!!!!!!



 「なあ、くるみさんよう」

 「なんですか?」

 「さすがに社畜帯キョンシーはやり過ぎなんじゃないか」

 おれはクルミから提出されたキャラ、スト-リーを見ていた。

 《社畜帯キョンシー。定時をこえるた教師が変異した姿。体力が限界に達しているため、変異前よりも判断力もパワーも弱い。しかし、連携技には注意!!!※弱々しいチョークの雨》

 さすがに怒られるだろ。

 「そもそも、なんで東ライダーが覆面なんだよ」

 しかも、武器が銃って。

 「しかたないじゃないですか、二人しかいないんですよ」

 「まあ、それもそうか」

 一人で何役もするとなると顔を隠すのは必須か。

 クルミはペンをこめかみに当て、ルーズリーフとにらめっこしている。

 こいつこんなに真面目だったっけ?

 



 早朝、おれはいつものように坂を登る。

 校舎にはおれ以外に人はいない。

 しかし、なぜだろう。誰もいないと分かっているのに教室にはいる直前、立ち止まり、髪を直してしまう。坂を登ったからか、心臓もうるさい。それになんだか、楽しい気持ちがある。おれはそんなに学校が好きだったのか?

 おれは自分の席につき、窓の方を眺める。

 空っぽの机に誰もいない椅子。

 まだ早朝だ。誰もいないのは当り前。当り前なのだ。

 

 

 

 


 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る