二、ひさしくん

 突然あらわれた、手。それが手だとわかったのは、暗いのに白っぽく光ってるようにみえたからだった。光っていないかもしれないけど、をしている。

 しりもちをついたまま、それをみつめていると、それは消えてみえなくなった。引き出しをしめようとしたとき、その中に箱があるのに気づく。

 あの手があらわれた場所にあったものだからこわいはずなのに、なぜか手に取らなきゃいけないと思った。

 ゆっくりとそれを触った瞬間、蔵の扉が開く。

「さやちゃん? そこにるんやろう?」

 おばあちゃんの声だ。

 わたしは立ち上がり、おばあちゃんにかけ寄った。

「ひさしくんに閉じこめられちゃって。蔵に入ったらいけないってきいてたのに、ごめんなさい」

「ひさし? ひーくん?」

 おばあちゃんは、おどろいた顔をしている。

「ひさしくん、友達を呼びに行ってしまったの。つげ口したのがバレたら、またいじわるされちゃうから、だまってて」

「そうなんや。ひーくん、さやちゃんに会いに来たんやな……」

 おばあちゃんの様子がおかしい。泣きそうな顔をしている。

「さやちゃんにうてなかったな。こっちおいで」

 おばあちゃんは、家の中に入って、広い座敷の隣りにあるお仏壇がある部屋にわたしを呼んだ。

 お仏壇に、ひさしくんが笑っている写真がある。

「どうして? ひさしくん、さっきまでわたしと話してたよ」

「去年、さやちゃん、こっちに来てないやろ。ひーくんが事故でうなってしもてな。お盆の集まりは、仕出し屋さんでみんなで食べたやろう? ひーくんの初盆、さやちゃんには言えんからって。黙っとって、悪かったなあ……」

 ひさしくんが、わたしに会いに来た。わたしは、ひさしくんに嫌われてると思っていたけど、違ったのかな。

「さやちゃん、蔵の中で何か見たんやろう?」

 おばあちゃんは、わたしの頭を撫でたあと、ふしぎな話を聞かせてくれた。

 

 

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