第2章 聖国の聖女と見捨てられた国

プロローグ 『ページはめくられた』




 かくして、知識を司る雛は飛び立った。


 自身の源を知るため。

 隣を飛ぶ鳥の事を知るため。


 外に出れば、自身の世界には引き籠れない。


 想いは示した。

 覚悟は決めた。


 けれど、世界は残酷だ。

 他者の想いが、欲が、飛び立つ雛を翻弄する風となるだろう。


 ところで……王国や、彼女たちの目指す聖国。はたまた帝国。かの三国以外の国はどんなところだと思う?


 王国は聖国、帝国とは隣接していない。

 その理由は、隣り合ってしまえば侵略される可能性があるからだ。

 そしてそれは、他の二国も同じ。


 繁栄を極める三大国家。

 安定を求めるがゆえに、三国は緩衝材となる国を残した。


 何もかも足りず、繫栄できなかった国。

 三国の周囲は、そんな国で溢れているのだ。

 三国がにらみ合う間に入り、緩衝材として盾となる。

 つまりは捨て石。


 聖国、帝国を意識するがゆえに王国には吸収されなかった。

 また、聖国と帝国は自国を守るための捨て駒とした。


 そんな見捨てられた国がどんな一途を辿るか……?

 それは火を見るよりも明らかだろう。


 彼女たちの目的地——聖国。

 そこのたどり着くためには、かの地は絶対に避けられないのだ。


 ここから始まるは、世界を旅する雛の物語……その二ページ目。


 鳥籠から脱したことで、彼女は唯一の力を失った。

 しかし、育んできた知識は消えることはない。


 学ぶために飛び立った少女——シェリア。

 彼女を守ると誓った少年——アイン。


 引き続き、見せようと思う。

 原初を知り、経験を積むための旅……その続きを。

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