第5回目のお題キャラクター『威厳はあるが軽薄な爺さん』

お題編 塙萬治

 はなわ萬治まんじ

 職業:武術家。 

 卍流体術なる武術の創始者であり、道場主。

 武を通してわたしの父のライバルであり親友だった人。

 今月で御年は77歳。

 その人は借金を申し込む時にわたしを担当に指名した。

 知らぬ仲ではない。

 というか、ある意味ではわたしの恩人である。

 

 子供の頃はよく遊んでもらった。

 わたしの父が道場破りに敗北し、亡くなった後も何かと世話を焼いてくれた。

 個人的な交流はいまだに続いていて、わたしが『まごころエージェンシー(株)』に入社する時の保証人になってくれたのも彼だ。


 だから彼が我が社にお金を借りに来た時は驚いた。

 道場の経営も順調で、生活に困った様子だったのに。

 もちろん、お金を借りる理由は人それぞれ。

 問われるのはキチンと返済できるかどうか。


 その点、彼は律儀だった。

 ちゃんと返済はする。

 するのだが。

 しばらくすると、また借金をするのだ。

 その繰り返し。

 なぜか借りる額も徐々に大きくなり、現在はトータルで300万円ほどの負債がある。


 彼から回収担当として指命されたわたしは、以降は仕事として彼の元へ赴いている。

 ここ最近はゴキゲンなことが多いし、返済が滞ったことも一度もない。

 今までにわたしが担当した顧客と比べると、問題はまったくない。

 ただ、段々と子供のように純粋になってきている気がする。

 言葉を選ばずに言えば、年相応の重みがない。

 もっと言わせてもらうなら、痴呆の疑いあり。

 いや、今のはいくらなんでも言いすぎた。

 反省している。


 そして今日は彼、塙萬治から回収する日。

 何事もなければいいのだけど。

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