第4回目のお題キャラクター『明るくて傍若無人なギャル』

お題編 杉乃若葉 17歳 タトゥーあり

 AM9時半、丸の内のオフィス。

 資料を読み終わってからのわたしの行動。

 大きなため息。

 胃薬をかじる。

 頭を抱える。

 転職を考える。


 そしてもう一度資料に目を通す。

『杉乃若葉 17歳の女子高生 左胸にタトゥーあり』

 そんなワードが初めのページに並んでいる。

 これはもう役満じゃないか。

 再び資料を読み返す。


『両親が離婚した後、看護師の母が保護者となる。

 思春期に荒れ始め、親の財布から金を盗みだし、万引き、窃盗を繰り返す。

 人様に迷惑をかけるよりはマシ、と母親同伴で我が社に借金の申込み。

 現在の債務は利子を含めて総額107万円。

 回収よろたん、ウェ~イ。』


 最後の一文を読んでヌルくなったコーヒーを一気に流し込んだ。

 ギャル語というやつだろうか?

 学生時代からギャルは苦手だった。

 いや嫌悪している、今でも。

 お金のためなら平気で体を売る。

 援交、パパ活。

 言葉を変えてもただの売春。

 つまりはアバズレでスベタ。

 興味があるのは最新のファッション。

 常にSNSでエゴ丸出しの情報発信。

 知性も品性も感じられない。

 わたしの好みはもっとこう凛とした大和撫子のような、ウフ、ウフフフフ……。


「朝っぱらから何をニヤニヤしとるのかね、キミッ! もう皆は回収に向かっているよ。大丈夫かね、キミィ~」

 突然、大山部長から注意を受けてわたしは現実に戻った。


「は、はい。直ちに向かいます」

「ちょっと待ちたまえ。今回は未成年の女子高生が相手だ。今から私の言葉を復唱すること、いいね」

「はい」

「一つ、絶対に体に触れるな」

「一つ、絶対に体に触れるな」

「二つ、絶対に性的発言をするな」

「二つ、絶対に性的発言をするな」

「三つ、絶対に脅すな」

「三つ、絶対に脅すな」

「以上だ、よし、行ってきなさい」

「あの、お言葉ですが三つめはどんなもんなんでしょう? 多少は脅さないと回収は難しいのでは?」

 わたしは疑問を口にした。


「ああ、今回は何度も言うように未成年の女子高生が相手だ。だから定番の『体で払ってもらう』とか、『風呂に沈める』という脅しはナシという意味だよ、キミィ」

「なるほど、よくわかりました。肝に銘じます。それでは行ってまいります」

 こうしてオフィスを後にした。


 そうなのだ。

 我が社は今では財閥系グループの傘下になっている。

 だからイメージが一番大事なのだ。

 違法行為は絶対ダメ。

 でも回収はしなければならない。


 今回のケースなら顧客である若葉ちゃんの母親がキーマンになる。

 若葉ちゃんで上手くいかなければ、母親に当ってみよう。

 そう考え、重い足取りで地下鉄の駅へ向かった。

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