第2回目のお題キャラクター『やたらドラマチックなお婆さん』

お題編 丸山ペラ子

「キミィ、お笑いは好きかね、キミィ」

 唐突な問いかけに疑問を抱いたが大山部長は幸いなことにゴキゲンのようだ。

 天使の笑みを浮かべながら回転式拳銃のシリンダーをくるくると回している。

 わたしは銃火器には疎いけど海外ドラマで見た覚えがある。

 白いグリップにハンマーのイラスト付き44マグナム。

 すなわち『俺がハマーだ!』の

 劇中と同じデザインのモデルガンが発売されると知った時は喜んだけど、当時は金欠病で泣く泣くあきらめたっけ。


「はい、特にそのマギーが登場する『俺がハマーだ!』は大ファンでして。夏のボーナスでDVDを買うつもりです」

「ならば今回の回収も頑張ることだね、キミィ。今日の顧客は少し厄介のようだよ。なんせね昭和の女芸人で口も度胸もハンパじゃないよ、キミィ」

 大山部長は語りだした。

 ・今回の顧客は海千山千のツワモノで同業の回収業者たちもマイッている。

 ・芸名は丸山ペラ子。

 ・そこで我が社の誇る営業がチャンスと見て片っ端から債権を安く買った。

 ・後は回収部の頑張り次第。

「簡単にまとめると以上になるよ。こういう流れだが、詳しいことは資料を確認してくれ」


「あの大山部長、え~と、一度営業部としっかり話し合いをする必要があるのでは? いつも尻拭いをするのは我々回収部じゃないですか」

「キミィ、待っていたって仕事は来ないよ。その点、営業はキチンと仕事を持ってきとるじゃないか。いっちょ前に文句を言う暇があるならサッサと回収したまえ」

 大山部長の迫力ある声には毎回震え上がってしまう。


「は、はい、直ちに回収に向かいます」

 わたしは席を立ってオフィスを出ようとした。

 だけど、どうしても心に引っかかりがある。

 これを放置して回収にはいけない。

 だから思い切ってダメ元でお願いしてみた。


「あの大山部長、今回の回収が無事解決したらボーナスとしてそのマギーを頂戴いたしたく……」

「ほう、この私にお強請りかね。回収は無事に済ますのが当たり前じゃないかな。それにキミにはまだ早いし必要ないよ。なぜなら……」

“ブルルルル、ブルルルル”

 話の途中で大山部長のスマホが震えた。


「もしもし、どうした? 何ぃ~! この商売は舐められたら終わりだよキミィッ! 構わないから土手っ腹に風穴を開けてやりなさいッ! すぐにマギーを届けさせる」

 大山部長は目の奥に悪魔の炎を、いや怒りの炎をたぎらしている。

 エエッ! マギーはモデルガンじゃなかったの!?

 わたしは聞かなかったことにしてオフィスを出た。

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