生まれ変わったらお猿さんでした。
灼熱氷
第1話
目を開けると青い空。広い空が見えた。
のぞきこむように猿の顔が。。。。
えっ!? 猿? おサルさん?
どこか山で倒れたのか?俺は。
動こうとしたが体が動かない。
俺、昨日まで仕事してたような気がする。
なんか腹が減ったなぁと思っていたら、お猿さんがおっぱいを
俺の口に当ててきた。えっ!? 口に入れろってことか?
口に入った乳首からなんか液体が出てききた。
母乳か。ま、なんとか飲めないことはない。
ない、ない。口の中に歯がない。
どうしたんだ俺・・・。いつの間に歯が抜けたんだ?
入れ歯が必要なのか?
おっぱいをたくさん飲んだら 腹が膨れて眠くなってきた。
そしてそのまま寝てしまった。
ん? なんかおしっこがしたくなってきた。
これってどこでするんだろ? わからんし、体も動かない。
手足を少しばたつかせることしかできない。
しばらく我慢していたが、それも限界をむかえてしまった。
で、でる~。
やっちまった。おもらしだ。しかも景気よく発射してしまった。
あああスッキリしてしまった。
そしたらまた眠たくなってしまった。
何もできないししっかり寝ることにした。
一週間過ぎた。
俺は猿で生まれてきたことを認識していた。
まじかよー、ま、アリクイよりはマシなのかなと自分を慰めるだけだった。
どこかの白い空間で 「あなたの次は 猿です」なんて言われた覚えもない。
気が付いたら 猿の赤ちゃんだったのだ。
たしか普通に電車に乗って会社に行き仕事をして帰ったはず。
どこまでやったのかその記憶もない。
自分が死んだのか死なないで転生したのかもわからない。
生まれ出たこの世界はどんな世界なのかわからない。
いつなのかもわからない。
なにもかもわからない尽くしだ。
人間っているんだろうか? どうなんだろう?
猿として猿たちと一生を過ごすのも楽しいんだろうか?
謎は深まるばかりだ。実は何もないんだけどね(笑)
そしてなんと、歩くことができるようになったのだ。
たった一週間で歩けるなんて 考えもしなかった。
さっそく近所を散策した。
季節は春のようだ。
俺は山菜はゼンマイとわらびしか知らなかった。それが生えてるので春だとわかった。
微かに甘い匂いがした。
その匂いにつられて行ってみると 甘夏の木があった。
木に登って一つとって落とした。そのまま持って降りる自信がなかったのでとりあえず落としたのだ。
まだ生まれてから一週間。木登りも初めてだ。
初めてにしてはよくできたものだ。
木からおりて甘夏をひろって皮をむいてひと房口に放り込んだ。
おー、ちょっとすっぱいが うめー。
どんどん口に入れていきなくなってしまった。
あーうまかった。おなかいっぱいだぜ。
俺は満足してみんながいるところに戻っていった。
一カ月ぐらい経つと 俺がどこに行って帰ってこなくても誰も心配しなくなった。
ようは一人前ってことなんだろうな。
前々から10キロほど先にある山の向こうに行ってみたいと思っていた。
たぶん日帰りはできるだろうが、泊りがけで行ってみたい。
移動は走る、走る。ただひたすら走る。
猿の体のためかあんまり歩くということはしないのだ。
山頂についた。眺めがよい。遠くに 小山みたいな集団があった。
ひょっとして家か?
まさか だけどな。
よしっ、そこに行ってみよう。
走る、走る。ただひたすら走る。
夕方ぐらいにはつきそうだ。
小山の近くに 一人の女の子をみつけた。
「あっ、お猿さんだ!」
女の子が叫んだ。
えっ、日本語?
ここは日本なのか?
「きゃにゅしゅわ」
こんにちはと言ったつもりだが、うまくしゃべれない。
なにせ猿たちとは キャーキャー言ってるだけだったし、しゃべるのは 初めてに近い。
「わっ、お猿さんが何か言った」
小山みたいなところに近づいてよく見ると 竪穴住居という言葉を思い出した。
うそっ、縄文時代?
女の子の服も簡素なものだ。縄文時代と言っても 俺は詳しく知らない。
ひょっとしてタイムリープ?
俺が人間の記憶を持っているという時点で不思議なんだけどね。
いやだー生まれ変わるなら異世界がいいぃぃぃ!
転生チートとかも欲しいぃぃぃ。
いや、普通ないか? そもそも普通なら転生なんかせんだろ。
普通を知らんけど。
とりあえず、手を出してみた。女の子に。
いや、いやらしい意味ではなく、普通に握手だ。
女の子は 首を傾げた。
握手とかそんな文化はないらしい。っていうか、普通俺もそんなことはしたことがなかった。
ま、今は猿だし、あってもいいのかと・・・。ないか。
途中でむいだ甘夏を持ってたので それを出した。
女の子は目を輝かせて、「食べていい?」と聞いた。
俺は、首を縦に振った。
俺から甘夏を受け取った女の子は、皮をむいでひと房俺にくれた。
俺はそれを受け取り口に放り込んだ。
「お猿さん、甘夏好きなの?」
嫌いじゃないから俺は首を縦に振った。
もしかして 「うん」ぐらいなら言えるかな?
「うん」
おっ、ちゃんと言えた。
もしかして慣れれば普通に話せるようになるかもしれない。
俺の期待は高まった。
「お猿さん、おいで」
女の子は家の方に歩いて行った。
ここの集落に人影らしいものはなかった。
が、家の中に入ると 女の人が赤ちゃんを抱えて座っていた。
「おや、お友達?」
「うん、お母さん、お猿さんのお友達」
「おしやしやす」
うまく「お邪魔します」とは言えない。
女の子のお母さんは 驚いてこういった。
「おや、まあしゃべれるお猿さんね」
俺は ペコリとお辞儀した。
「ずいぶんと礼儀正しいお猿さんなんだね」
「そうだね、お母さん」
お母さん・・・。目の前にいるのは女子高生ぐらいの感じの女の子だった。
子供が子供を産む。いや、昔なら女子高生でも結婚できたか。
結婚したら子供作って産むよな。
つまり、若いということだ。
ってか生まれて一か月の俺が言うのもなんだが。
「このお猿さんとこれから一緒に暮らすの、いいでしょ お母さん」
えっ、気が早い。いや、こんなもんか?
まさに拾ってきた野良犬感覚だ。
俺も帰る気なかったから別にいいんだけどね。
猿と一緒にいるより人間といたほうが楽しそうだ。
かわいい女の子だし。
たたたたっ。
「た、大変だー」
外で男が叫ぶ声が聞こえた。
みんな外に出た。
「お、オオカミだ。オオカミの群れに襲われた。」
なにいっ。オオカミ?
ええと 棒、棒はないのか。ふと家の中に棒がおいてあったのを思い出した。
俺は剣道五段。小学生の時から剣道を始めて順調に成長し、中学生の時に初段になった。
高校、大学とやって30才で五段になったのだからめちゃくちゃ優秀だったのだ。
何人かが棒をもって男の後を走っていった。
俺もついてった。
そこには 畑があった。
生まれ変わったらお猿さんでした。 灼熱氷 @taktn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。生まれ変わったらお猿さんでした。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます