第7話意思がぼやけた。

 扉を開けると光が目に飛び込んできた。

 最初はただの日の光かと思っていたどうやらそれは違っていたらしく、意識に飛び込んでくる光とでも形容すればよいのだろうか。現実の光というよりどちらかというと、ゲームの中での光のような少し違和感を感じる分離したような光だった。

「あ、あれっ」

 僕の目の前の景色が暗転した。

 次の瞬間僕は無人島にいた。後ろを見ると扉があいていてそこに入るとそれは先ほどまで飛び出した扉が存在していた。

 なんだ、ただ単に無人島の中の部屋に閉じ込められていたのか……って大問題だよ! 無人島? いや、まだ無人島だって確定したわけではないとか考えていたんだけど、なんだこの違和感。僕の中に意識が無数にあるような感覚。僕はその感覚に意識を集中した。すると僕の目の前の景色が変わり僕は……ダンジョンにいた。

「ど、どういう事だよ。僕の意識がコロコロ変わる。無人島だったりこのダンジョンだったり。まだ僕の中には意識が存在していてその意識に切り替える。すると僕はどこかの村の中央にいた。もちろん後ろを見るとそこには先ほどの部屋があり、辺りを見回すと何かがうごめいているのが見えた。目を凝らしてみると、それは目が落ち、体が崩れた死者、つまりゾンビだった。

「あれ、ゾンビだよな」

 背筋が寒くなるのを感じていた僕はすぐさま先ほどの部屋に飛び込んだ。

 部屋に戻っていろいろと考える。しかし違和感はまだ残っている。つまりはゾンビ村とダンジョンの意識だ。それに切り替える、というより会話を試みる。するとそれぞれの意識と通じた。僕と同じ意識だ。

「何がなにやらさっぱりだ」

「僕もだ」

 ゾンビ村とダンジョンの意識がそう答えた。

 どういう事だろうか、それぞれの意識と会話が出来る。交信が出来る。そしてそれらそれぞれが間違いなく自分自身である。

 なんとか説明しようとするのならば、自分の脳で体を意識的に動かせるようにゾンビ村と、ダンジョンの意識をそれぞれ同時に同じ意識で動かせるのだ。そしてそれは向こうの意識も同じようで、向こうもそれぞれ僕を動かせる。しかし動かせるというよりは、連動しているといった方が適切なのかもしれない。僕とゾンビ村、ダンジョンの意識は連動していて、どうじに異なる意識が同じ空間に存在している共有されているみたいな一つを三つに割った共有された意識という感じ。

 何かこの異常な現象のヒントは隠されてはいないのだろうか。どうすればいいのか、僕たちはこれからどうなってしまうのか。どうすれば現状を打破することが出来るのか。僕は僕たちは一旦部屋に戻る事にした。

 僕達がそれぞれ今しがた出た部屋に戻ると三つに分かれた意識が一つに統合された感じがあった。無人島、ダンジョン、ゾンビ村それぞれの意識と肉体が別にそこで存在しておりながら、それらは同じ存在からわかれた肉体と意識である。それは間違いようがなかった。しかし分身したからといって力や能力が3等分されているかんじではなくて、同じ力と能力である。それらは意思疎通ができ、同じ存在でありながら交流が出来、僕ではあるのだが、ここにいる存在している僕とは違うという奇妙な状況化にあった。一人に意識が集約された僕はこの部屋でヒントを探してみることにした。不思議と不安はもうなかった。好奇心のようなものが勝っていたのか、アドレナリンが出ていたのか、非現実的過ぎて理解を超えて逆にゲーム感覚で楽しんでいるのか、それは僕にもよく分からなかった。

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