第5話ようやく冷静になった。

 ようやく、時間にしてどのぐらい経ったのだろうか。体感的には30分ぐらいだろうか。全裸の僕はようやく冷静になった。そして冷静になったら自分のこの状況は少し恥ずかしくなった。なぜならば監禁、軟禁されているのであれば誰かに見られている可能性があるからだ。否定出来ないからだ。

「うりゃあ! 僕の事見ているんだろう。観察しているんだろう。何がしたい! お前は一体何がしたいんだ!」 

 と誰かが僕のこの今の状況を見ている事を仮定してそう叫んだ。そう家に帰ったら誰かいるかもしれないから、叫んで脅す的なあの感じである。

 しかし帰ってくるのは部屋にこだまする自分の聞きなれた声だけであった。

「よし、この部屋を出よう」

 独り言が様になったこの状況で部屋を出ようと決心して扉へと歩を進める。おっと、まだ全裸だった。危ない危ない。いろんな意味で。

 僕は笑ったがそれは恐怖から来るものなのか、自分をあざけた笑いなのかはよく分からなかった。

 僕はその後真顔で服を着たのであった。

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