第15話 あの場所へ

 そうしているうちに、神社への入り口に着いた。鳥居の向こうには山の中腹にある本殿へと繋がる石段が続いている。ジョニーさんを先頭に、俺達も少し歪な形の石が積まれた石段を登り始めた。

 ジョニーさんが、神社についての説明をしてくれた。簡単に言うと、神社が祀っているのは大きくわけて二つになるらしい。


 一つは、自然のあらゆるものなどに宿る神、八百万の神を祀る場所。いくつかの神様の名前を挙げられ、確かに俺でも聞いたことのある名前だった。

 もう一つは、悪霊などを鎮めるためにある場所。


「でも、この神社は調べたところ前者だった。後者だったら、トネコ様についても説明がついたのにな」

「夏に神社でお祭りがある程度で——あとは年末年始に初詣に来るくらいだったんですけど、どんな神様が祀られてるかとか考えたこともなかったです」


 俺もだ。でも、さっきの神社についての説明を聞いていて昔、ばあちゃんが言っていたことを思い出した。


「ばあちゃんはなんでいろんなことがわかるの?」という幼い俺の質問に対して、「風や草、石、水……そこら中にいる神様や、精霊さん達……そういう方々がね、力を貸してくれたり、教えてくれるんだよ」と答えた。当時の俺は幼くてよくわからなかったから、「ふーん、よくわかんないや」でその話は終わった。

 ジョニーさん曰く、この村で狂っていなかったのは多分俺のばあちゃんくらいらしい。


 話しているうちに、石段を登り切り境内についた。リュウが、夏祭りのときとかはこの辺りにも屋台がいくつか出て、村中から人が集まるんですよ、とジョニーさんに説明していた。

 ジョニーさんは、あれが御神木?と夏祭りの話を完全にスルーして聞きたいことだけ聞いてきた。

 本殿の奥にある大きい木、それが御神木というのは無知な俺でも知っていたため、頷く。


「まあ大層な御神木だわな。でも、それよりも強い力を放つ存在がもっと奥からするの、どう考えてもトネコ様だろ」

「えっ……でも本殿より奥はただの山になってて――祠なんてないと思いますよ。道も無かったと思うし……」

「まあいいから俺様についてこい。ここまで近づいたらもう一本道を歩くようなもんだ」


 そう言って本殿を通り過ぎたジョニーさんは、草木が生い茂った道なき道を突き進んでいく。

 人が歩く道ではないため、地面がデコボコとしていてとても歩きづらい。そんなところを上手く草木を避けながら飄々と歩いていくジョニーさん。サンダルで来たときは、正気か?と思ったがこの地面でも普通に歩けているのを見て、目を疑いながらも着いていくのに精一杯だった。


「直哉とのつながりがまだ完全じゃなかったときにさ、不完全とはいえ実体化しかけて現れたのがこの神社の前あたりだったんだろ?それは自分の本拠地に近かったからなんだよ」

「あ~……そういうことだったんですね。僕もそこが気になってたんですけど、納得いきました」


 コンビニ帰りに神社の前で見た煙のような状態のトネコ様について言われ、俺も納得した。確かに神社の入り口のすぐ近くだったからだ。


 しばらくすると、道が拓けた場所に出た。振り返ってこちらを見るジョニーさんが、「ここだろ?昔、女の子に会った場所」と言ってきた。


 ——ここだ。間違いない。


「ここです。でも——昔、俺達が入った場所から迷子になったとしてもここに辿り着くはずが……」

「時間の経過が速かったんだろ?わかりやすく言えば、異世界みたいな空間を通ってたんだよお前らは。あと、ここに来るまでにも結界があったからな。他のやつが来ようとしてもここには辿り着けないようになってる」


 まあ俺様の前じゃまったく意味なかったけどな!と大きく口を開けて笑い始めるジョニーさんを横目に、俺は、あの日の記憶が突然脳内にフラッシュバックのように押し寄せてきて頭を押さえていた。

 どうかしたの?とケイが俺の様子に気付き、声をかけてくれた。リュウも心配して駆け寄ってきた。


「思い出した……あの日のこと——ここで何を話したのかも……」

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