【英雄】と、人殺し
「王はその者と、王国の兵とを争わせましたが、誰にも敵いませんでした」
「敵わないということは、その者は強かった、と?」
神父の言葉に、女はまた吹き出すように笑う。
「またまた。誰にも、と言いましたよね? 勝てなかったのはその者なんですよ。その者は兵を率いる能力や、一人で兵を殲滅する力はありませんでした。その場にいた王が、家臣が、兵が、落胆しました。何せ争いを打開する為に召喚したというのに。しかし、その者のおかげで王国は勝利し、その者の手で隣国は敗北したのです」
「……よくわかりませんね。話を聞く限り、その者は強くない、いや、弱いくらいなのでは?」
「ええ、しかし先程も言ったように、人を殺す事には長けていました」
「その、人を殺すというのはどういう事です?」
「わかりませんか?」
女に問いかけられ、神父は言葉を詰まらせる。だがすぐに女は小さく笑いかけた。
「そういえば神父様でしたね。殺す、なんてこととは縁が無い。いえ、忘れていました。それで何の話……ああ、そうそう、人を殺す事、でした。時に神父様、兵達の戦いは、どうしたら早く決着がつくと?」
「……相手の兵を、全滅させら?」
「それは痛手を与える決着ですね。早く決着をつけるには、頭を潰すのです。兵を統率する者、隊長だとか、そういう立場の者。そういう者達を、その者は殺して回りました。ある兵を率いる隊長は野営中、首を吊った姿で見つかり、またある隊の統率者は逆に首が無い姿で発見されました。新たに統率者を立てた所で、人の上に立つのは簡単ではありません。統率者を失った隊は蹂躙されるだけ。やがて兵達は恐れました。いつか自分も、と。恐怖はあっという間に、流行病のように広まるのですよ」
そう語る女は、どこか楽しそうであった。
※字数少なくて申し訳ありません。
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