1話後編

俺は、もう隣にいない幼馴染のことを少し

思い出しながら家へと歩いていく。


「ただいまー」


一声かけるが、帰ってくるのは家で飼っている猫のレモンがニャーと、鳴くだけだった。

俺の家は父が単身赴任しており、母は仕事に

妹は父についていって海外にいる。


2階の自分の部屋に入ると、気が抜けてベットに倒れ込んだ。

今日はたくさんのことが一度に起きて、

状況を飲み込まずにいた。

まだ夕方にも関わらず寝かけた時、メールが

二件きた。

一つは母からで、洗濯物を取り込むように。

二つ目は、先輩達が俺をグループに入れた通知が来たところだった。

その後何度もメールが飛び交っているので、

ミュートにして洗濯物を取り込みにいった。

日が沈みかかっていたからか、隣の家には

ほのかに明かりがついていた。

その家は幼馴染の家であり、本人が帰ってきていることを意味していた。

その時、強烈な吐き気が襲ってきた。

洗濯物は家に入れた後だったのでトイレに

駆け込んだ。


▽ ▽ ▽


涙も一緒に吐き出していたためか、岸花先輩からの着信に気付けずにいた。

三度目の着信でやっと電話に出るのだった。


「電話に出るのが遅い!てことで、葉山には

罰を与えまーす。」


あれから言い訳しても、知ったこっちゃないようで、聞いたことないお店に来いとの話だった。

俺はスマホの時計を見ると、十八時と映し出されていて、言われたお店には電車で行くと十九時に着くと、地図アプリに載っていた。

母親に、夜ご飯はいらないとメールで伝えて

家から飛び出した。

電車で行くより自転車の方が近いと考え、

全速力で、ペダルを漕ぐのだった。


▽ ▽ ▽


その店の近くの、駐輪場に自転車を停める頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

少し歩いた所に、店があり「本日貸切」と

書かれていた。

なぜ、貸切にできるのかとかそんな疑問を

抱きながらもドアを開けた。

パーン!と、クラッカーの音が鳴り響く。


「「「葉山入部おめでとー!」」」


「入部歓迎会へようこそ。てか、遅いんだよ。」


少し照れくさそうに、岸花先輩は言う。

まあ、話すことはまだまだあるから。

なんて言いながら俺を先に誘導した。

そこには、ピザやパスタなどが並んでいた。

店内がイタリアンな雰囲気だったのでもしやと、思っていたが考えが的中したみついだった。

店内は少し小さめだが落ち着いた雰囲気でありつつも壁には絵が描かれていたりポップな感じだ。

俺は、自転車で移動したためにお腹が空いていたので先輩達をよそに、食べ進めるのだった。

その間、先輩達はさまざまな話をしてくれた。

主に、岸花先輩がしゃべっていた気が…


「なあ、葉山ってあんなやばい幼馴染以外に

誰かいなかったのか?俺だったらあんな

性格悪いやつ無理だわー。」


悪意がない、岸花先輩の正直な言葉だった。


▽ ▽ ▽


二時間程経つと、流石にお開きになった。

先輩たちが、奢ってくれたのは素直に感謝したがその後に奢った分の仕事しろよと、言われたのはちょっと嫌だった。


「あ、そう言えば1週間後ぐらいになんか一年生と二年生の仲を深めるために合同キャンプがあるらしいな。」


解散直後の言葉だった。

俺は、予定表を見ていなかったからその話は

初耳だ。


「それ、もっと早く言ってくれません?」


そんな一言に対して、返事をするわけもなく

岸花先輩は話題を変えて話してくる。


「実は、俺らの部活無くなりそうだったよ。

人数が足りなくて、部室立ち退きってことになってたんだけどな、葉山きたからなんとかなるわ!」


自分がこの部活に入れて初めて良かったと、

思えた瞬間だった。







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