第24話 初コラボ!それはハリケーンの予感


 ──Zwei定例会議から数日後。

 柊カノンちゃん………なぁーちゃん先輩こと、那月なつきさんとコラボをする事になった。


 そうして、様々な準備が急ピッチで行われ~~本日。

 コラボ当日になった。


「ふぅ……緊張するぅっっ……………」


 と言いながら、時雨は机にあるジュースを一気に飲み干す。勿論、時雨大好きなコンビニ産である。


 そして、片手間に即死コンボの練習日課をやりつつ、今回のプレミアム配信のコメント欄をチラリと覗く。


『さーて、始まるぞぉ!天月カグレの“初”コラボ!!』

『あ、そっか、それな。確か柊カノンと春夏秋冬ひばりだよな(意外過ぎるよな)』

『柊カノンは最近のVだけど、春夏秋冬ひばりは古参の方だろ!?良くコラボ出来たなぁ』

『それな!カグレ人望厚いんか(笑)』

『なんか天月カグレとは仲がいいらしいよ。ひばりちゃんが配信の時に言ってた』

『へぇ……以外。じゃあー、中身リアルでも案外仲良しなのかな?羨ましいっっ!!』

『──え…オジサンと?ピチピチの女の子が!?』

『いやいや、天月カグレの中の人がオジサンだと決まった訳では無いからな←天月カグレ知らない奴の為に一応言うけど』

『でもまぁ、可能性は無くは無いけど(笑)』

『ま、今回のコラボでどういう絡みになるのかは全く分からないけど、楽しみ!』

『それな!』

『でもまぁ、確実に声がごちゃごちゃになってカオスになるのだけは分かるわ』

『笑笑ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)それはそれで楽しみや!』


 とまぁ、事前に告知として【天月カグレ 初コラボ!御相手は“春夏秋冬ひばりちゃんと柊カノン”ちゃん!】という文面でTwitterに投稿しておいた。

 他の2人も各々で同じ様な投稿をしていたので、今回のコラボは結構な評判があるようだった。


 接続数=視聴回数もかなりのものになる筈だろう。


「っ………でも、天月カグレのことをオジサン認定してる人が何人かいるのは不服…っ」


 なんて、愚痴を零しながらもガチナイトの即死を確実に淡々に決める時雨なのであった。

 ──まるで呼吸をする様に、当たり前の様に。


 ☆☆☆


 ~今回のコラボ内容~

 対戦相手 柊 カノン ちゃん

 傍観者 春夏秋冬 ひばり ちゃん

 コラボ場所、Zwei 配信スタジオ


 そしてコラボではゲーム配信。つまり“スマファミ”をやる事に決まった。


 正直、コラボ内容が“スマファミ”で助かっている自分が居た。なんせ、それ以外の勝負になったら恐らく…というか、確実に勝ち目は無かった訳だし。


 コラボの段取りを決めてくれた四季さんには感謝しないと。まぁ、コラボをすることになった原因は四季さんのせいだからウィンウィン?いや、マイナスかな?かなりの。




「──やっほ~シグシグ。

 今日の配信の準備は万端かなぁ♪」


 Zweiの配信スタジオAにて、配信30分前に準備を終えた時雨は軽い緊張感を持ちながら待機してスタンバっていた。


 そんな時雨に声を掛けて来た四季さんは編集用のノートパソコン?を片手に提げ、右手のコーヒーを嗜んでいるようだった。


 小さな宝石が輝くイヤリングに、高いヒール。身体のラインがよく分かるような小麦色のスーツ姿。うん……シティーガールorオシャレ大学生のお手本みたいな人だ。



「えと…準備、ですね。ゲーム機材などは一通り大丈夫です。前回の教訓から1時間前には準備を開始してましたので」


 今回はZweiでの配信。その為に今日使うゲーム機材商売道具を自宅から持ち込み、準備をしておいた。

 一応、Zweiには一通りゲーム機材などは揃っているらしいけど、まぁ普通は自分の道具を使わないと本領の50%も出せないから借りる事は無いだろう。


「イイね~!だいぶ、VTuberらしくなってきたんじゃない、シグシグ♪」

「あーっ、そ、そうですか。四季さんに言って貰えると嬉しいです。説得力もありますし」


 少しだけキョドりながら答える。


「ですけど………今日の配信はやや不安ですね」

「まぁまぁ大丈夫だって♪シグシグは十分強いよ。

 だって、私を(スマファミで)ボッコボコにした張本人なんだから♪」


 いつものおちゃらけた雰囲気が一変。途中からは声色が変わったような気がした。

 あの時のオーディションの時……

 もしかして、根に持ってるのだろうか?


「はぁ、分かりました。やるだけのことはやりますけど……期待はしないで下さいネ」


 でもまぁ、取り敢えず準備は完了だ。

 後はコラボで最大限に盛り上げるだけだ!


 ☆☆☆


 数分後。那月さんも遅めの合流、そして最終準備も終わり、後は四季さんが配信をスタートすれば配信が始まる。


 まだマイクはオンにしておらず、声はネットに乗らない。なので、時雨・四季さん・那月さんの3人だけのちょっとした気まずい空間になる。


 今回の配信は春夏秋冬 ひばり ちゃんのチャンネルで行う事になっている。


 理由は春夏秋冬 ひばり ちゃんのチャンネルが1番登録者数が多く注目されやすい&視聴者が集まりやすいからだ。

 更にカノンちゃんとカグレの間を繋ぐ仲介役に回ってもらう為でもあり、審判レフリーでもあり、もしもの時の為に居てくれるらしい。

 

「──はぁっ!今日の配信 楽しみだな天月カグレ!」


 今まで黙秘を続けていた那月さんは唐突に声を上げる。それも時雨に狙いを定めて。


「うぅっ、」


「………………なにか喋れよ、つまんねナァ」


 言葉を交わす?いや、それは会話ですらない。

 時雨は「ヘヘッ」と乾いた表情をし、那月さんは「 ハッ!」と鼻を鳴らす。四季さんは「フーン」とニヤケ顔だ。



 初コラボ…………それは、ハリケーンの予感だ。



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