第21話 Zwei定例会議


 ──Zwei定例会議。それは1ヶ月~3ヶ月のスパンに1度行われるZweiの全体会議のことである。


 社員である専属VTuber含め、配信者、マネージャー。更には編集担当やCG担当などのほぼほぼ全ての人材が招集を受け、一同に説明を貰う。前回の会議後に会った出来事の反省や新たなプロジェクトの説明。その他諸々の機器の説明など様々だ。


 勿論、強制参加などでは無い。……特にVTuberに多いのだが、人混みが苦手だったり、家から出られない人など諸々いるからだそうだ。


 時雨は人混みは苦手で慣れていない方だが……一応参加はする事にした。初回だからと言う理由もあるが、恐らく会議で“天月カグレ”のやらかしについてあるはずで……その当事者がその場に居ないとなるのは流石に不味いんじゃ無いかと思ったからだ。


 まぁ、佐々木さんによると天月カグレのことは上手い具合に誤魔化すと言ってくれたし、当然時雨には注目が行かないようにすると約束をしてくれた。


 その為、少しは気が楽だけど……うん、不安な気持ちは拭えない。





 ~そうして迎えた日曜日~

 昼ご飯をいつもの楽園コンビニで軽く済ませた後、時雨はZweiへと向かった。元々Zweiの近くに待機スタンバっていたので、数分の歩行でZweiの会社の中に入ると…4階へと向かう。


 ──4階。そこはZweiの定例会議などの大勢が集まるのに適した大部屋がある。まるで大学のような真っ白でシンプルな部屋。そこに3人用の長テーブル&キャスター付きの椅子がずらりと並べられ、正面には巨大スクリーンが鎮座していた。


「う、うへぇ……」


 と、言葉が漏れるほど部屋は広く、100人くらいは余裕で入るだろう。


 時雨が来た頃には、既に人は多く集まっていた。

 キョロキョロと陰キャな雰囲気を醸し出しながらも辺りを見渡す。後ろの席は大体取られているので、取り敢えず誰もいない真ん中の方の席に腰を下ろした。


 パッと見ると、女性がかなり多い。マネージャーさんなのだろか、それともVTuberなのだろうか?流石に声を聞かない限りは、『極度のVTuberオタク』のスキルを持つ時雨でも素性は分からない。


『聞く』というのは選択肢は時雨には無い。それに会社内では暗黙の了解があるらしい……

 それはトラブルを避ける為にVTuber同士で自分が演じるキャラクターを明かしては行けないということだ。


 結局は視聴者さんの取り合いが基本の配信業界。

 皆、顔には出ていないがバチバチなのである。




 ──そんなこんなで始まる定例会議。

 時雨の隣には後から合流した四季さんが座り、もう隣には知らない人←怖そうな人が座り、万全の体制で会議に望む。


 部屋はほぼほぼ満室のようで、何人かは顔の知る配信者さんを見掛けたり、声の盛れた方向から時雨のスキル『極度のVTuberオタク』で調べて何人か推しのVTuberは見つけた☆

 素直に嬉しいです( ◜ᴗ◝)と、顔が緩む時雨。


 ──( *`ω´)キッ


「ヒッ!?」


 少し興奮しすぎたのだろうか……

 隣の人に睨まれました。怖いですっっっ。






「──あ、あっ……ゴホン。では、Zwei定例会議始めますね」


 そう言ってマイクを握るのはお馴染みの佐々木さん。

 どうやらZwei定例会議を仕切るのはマネージャーさんの仕事のようだ。


「大変だよね~ササキん。たしかプロジェクトリーダーだし、シグシグのマネージャーな訳だし、今回は定例会議担当だったんだね」

「?、担当……ですか?」

「そそ、定例会議はローテーション性なんだよ♪だから、今回はマネージャーさん達が任せられてる。勿論、VTuber担当の時もその内あるから気を付けてね」

「えぇぇ……そういうものなんですか?」

「そうそう。Zweiの社長の考えが、【ONE FOR ALL・ALL FOR ONE】をモットーに掲げているからね♪とにかく分担分担分担なんだよ♪」


 ということは、時雨も佐々木さんの様に前に出て話さなければならないのだろうか?嫌だなぁヾノ・ω・`)

 まぁ、これだけVTuberが多種多様にいるのだ。自分が……しかも新人で高校生の時雨如きが皆の前に立つのはおこがましいので多分無いとは思うけど。



 そんなことを思いつつ、佐々木さんの話を聞く。

 佐々木さんは慣れた様子でスピーディに会議を進める。


 ・今回の配信者とVTuberの売上の件

 ・今回全員に配布する機器の説明用途と注意点

 ・来週にあるイベントの件


 ──そして数日前にあった………あるVTuberの炎上の件。


 恐らくというか、確定で天月カグレ案件というのは間違い無い。だが、決して名前は出さずに淡々と言葉を並べ謝罪と反省を述べ続ける佐々木さん。


「…………チッ、」


 んん?今、隣の人舌打ちした!?

 聞き間違いだろうか……!?いや、でも……



 そんなもの露知らず「これで、この件の説明は終わらせて頂きます……」と、佐々木さんは話を閉じようとした瞬間…


「──────ちょっと待てやッッ!」


 突然、時雨の隣に居た人が立ち上がり怒鳴る。


「な、何事ですか?」


「さっきから聞いてりゃア、なんだ!?そりゃァ。

 天月カグレだろ!さっきから言ってること全部。何で堂々と言わねぇ、何で本人は謝罪しねェんだ。何で本人は平然と配信してんだ!

 私は皆の代弁者だ。だから代表して言ってやるんだッ」


「別に名前は出していません。ですので天月カグレの件ではありませんよ。ハイ、座って下さいね」


 だが、佐々木さんは上手く聞き流してしまう。


「クソ、天月カグレのせいでコッチも迷惑してるって言うのに…」


 大きめの愚痴を零しつつ、ドカりと座る。









「……………………………っ」


 ──今、隣いますよ。天月カグレ当事者が………


 冷や汗をダラダラと垂らし、項垂れることしか出来ない時雨。隣ではニヤニヤと笑う四季さん。



 っっっ…………………ど、ど、ど、どうしよう。

 や、や、や、ヤバい状況になって来た。





 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る