第19話 電車の中にて……
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☆お知らせ☆
【天月 カグレ 謝罪!】今日 19:00から緊急で配信やります!見てくれたら嬉しいです!よろしくお願いします!!
内容
・昨日の配信について
・自己紹介します!
・活動方針について
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「よし……っと」
YouTubeのコミュニティとTwitterで時雨は告知を行う。もちろんやり方は四季さん直伝であり、時間と内容を短くキッチリと書き込む。
現在、Zweiから出て電車に揺られる時雨は寄り道などせずに真っ直ぐ帰路に着いていた。
……が、Zweiから出る途中になにやら社内で揉め事?みたいなものが起こっていたけど。まぁ、取り敢えず自分は関係無いと思うので、置いておいて。気にせずに出て来た。
家までは残り数駅、20分程だ。
「ふぅ………………………………」
1つ深呼吸をし、気持ちをゆるりと整える。
そして帰宅してからの 時雨
──ピロン♪───ピロン、ピロン♪
「おっ!」
告知をしてからほんの数秒……早くも、視聴者さんから
自分の事に反応してくれる、それだけでなんだか嬉しさを感じる。それにVTuberになったんだと自覚させてくれる。
──────────ピロン♪───ピロン!、ピロン♪ピロン!、ピロン♪ピロん、ピロン♪ピロン、ピロン♪ピロン、ピ口ン♪ピロン、ピロン♪ピロン、ピロン♪ピロン、ピロォン♪ピロロン、ピロン♪ピロン、ピロン♪ピピロン、ピロン♪ピロン、ピーロン♪ピロンン、ピロン♪ぴロン、ピロン♪ピロン、ピろン♪
「ちょ、ちょ、来すぎ来すぎィィっっっっ!!!!」
Twitterは昨日のうちに通知OFFにした。それじゃないと一日中通知が鳴りっぱなしだっただろうから……だけど、コミュニティの通知はoffの設定をしておらず、コメントに対しての反応音が電車内にテンポ良く響き渡る。
慌てて通知をoffにし、周囲を見渡すフリをしなが知らんぷり。正直恥ずかしいけど。変に動揺すると逆に不自然に映るのが東京なのだということは時雨も理解していた。
───流れ続ける、大量に押し寄せるコメント達。
その一つ一つのコメントをビクビクしながら目を通す。
『おー、キタキタキタキターーァァ!!』
『待ってました!天月 カグレぇー』
『もうスタンバってます!』
『ヤバ、激アツ展開』
『よっしゃー、今の仕事速攻で終わらす』
『ワイもワイも~』
『笑笑、ワイもぉ~』
『でも、続けそうで良かった良かった!』
『それな!』
「…………………………。」
あぁ………そっか、そう…なんだ。そう、だったんだ。
「私のこと……まだ」そう無意識に言葉を零し──時雨は何事にも形容し難い幸福感で包まれる。
今が誰も居ない虚空ならば──ガッツポーズをしながら喜んでいる所だが、今さっき恥ずかしい思いをしているこの身。これ以上は流石に……というか、そんな事をしたらヤバいやつ判定を食らってネットへGO!→炎上→人生終了→ゲームオーバーなのでやらない。
まぁ、そもそもそんなことをする気概など時雨には存在しないけれども。
───数分が経ち、次の駅で降りる所まで来た時雨は人の乗り降りを感じない程に没頭してコメントを読んでいた。
『今更?初配信で大失敗。大迷惑掛けてて、よく平然と配信しようと思うよな(笑)』
「っぅ……」
──時たまに心無いコメントもある。
だけど。
『オレは待ってたぞー!』
『頑張れ〜!!!!』
それ以上に応援のコメントが多く、気にならないほどに時雨は気持ちを高められていた。
そんな時だった。
「──────あっ、天月 カグレ配信するって!」
電車内に響く、1人の男の声。
「えっ!ええぇ!!??」
時雨は自分の正体がバレたのだと勘違い。つい、その声に続いて声を上げてしまう。──だがほんの数瞬で、そんな訳が無いと理解。
それでも、冷や汗をダラダラと垂らしながらその声の方向へ急いで振り向く。
……そして更に数秒後に安堵のため息を吐く。
どうやら聞こえたあの声は、3人組の男子高校生の1人…そして、恐らく天月 カグレの1視聴者さんのようだった。
「バカ。声うるせーよ」
「それそれ、恥ずいて。しかもVTuberの話かよ」
「まあいいだろ!単純に気になるんだよ」
そう言い、その子は興奮気味にスマホの画面を2人に見せ付けている。
「だって、すごいんだよコイツ。初回の配信でいきなり放送事故してんだぜ!面白すぎだろー」
あー、
視聴者さんの生の声を聞き、少し項垂れる時雨。
気にしないように心掛けようとするも……心に少しヒビが入る。
「あー、オイオイ。ちゃっかりコメントするなよ」
「バカ!見んなよ」
「いいだろ、別に」
わちゃわちゃとザワつく3人組。それにひっそりと耳を傾ける。
「わぁー、なるほどなぁ」
「ほぉほぉ!」
なになに!?なんの話ッッ!
気になるも、目立つ訳にも行かない。
ただただ時雨は聞き耳を立てる。
「へー、名前は“VTuber大好きマン~推し捜索中~”ねぇ」
「ははは、個性的やな」
なになに……“VTuber大好きマン~推し捜索中~”ね。
急いで時雨はコメント欄を遡りながらその名前を探す。
生憎、名前が個性的で長めなのですぐに彼のコメントは見つかった。
そして、コメントにはこう書かれていた。
『──頑張れ時雨、応援してるぞ〜!』
たったの1文。たったの1行。だけど十分過ぎる程に嬉しかった。飛び跳ねたいくらいに。だけどやらない(以下略)
そっか…頑張ろ。これから。
身近に感じたこの気持ちをしっとりと心の中にしまい込み、感じ、活力へ変えた。
最寄り駅に到着した。
そして時雨が降りる際───3人組の前を通る。
その時……何を思ったのか………時雨は彼に向けて自然とウインクを送ってしまう。
──────マ゚ッ!アッ!!Σ(゚ロ゚;)
3人は時雨を見てギョッとし、固まる。
(っ <。///)はわわわっっ!!やってしまった。恥ずかしい。なんでこんなことッッッ!!
田舎出身の芋女如きが調子乗った。
後悔しつつも、表情は緩い時雨は帰路に着くのであった。
☆☆☆
自然とウインクを送ってしまう時雨に──マ゚ッ!アッ!!Σ(゚ロ゚;)と驚いた3人は戸惑っていた。
謎の美少女のウインク&スマイルに、3人は驚き顔を赤くしながら彼女の小さく可愛らしい後ろ姿を見つめていた。
「な、なんだったんだ……あの人。カワイイ(惚れた♡)」
スチャリとメガネを直す、
「そ、そ、それな(惚れた♡)」
自分の欲に負けん!と、巻いてあるバンダナをキツく締め気持ちを立て直す
「好きだ♡(すごくね!?)」
見た目は平凡。だが誰よりもVTuberには熱い気持ちを宿す、”VTuber大好きマン~推し捜索中~”こと
「「心の声が逆になってるぞ( ´ ▽ ` )」」
そう2人は優斗にツッコミを入れつつ。視線だけは絶対に彼女からズラさない3人。
そんなこんなで時雨は知らず知らずの内に、時雨ファンを増やしてしまうのであった。
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