第11話 VS 春夏秋冬ひばり
──ゲーム機やテレビの諸々の準備を整え、テレビ前に集う2人。1人は特注の4色カラーリングが施された
( ̄^ ̄゜)うぅ…
ま、まさか、いきなり大好きな配信者さんと
その為か、準備やら何やらを色々と忘れて尋常じゃない程にてんやわんやしちゃったけども。
しかも……ゲームは『スマファミ』かぁ。
引き分けの無い、勝利or敗北の2つしかないシンプルな対戦ゲーム。更にゲームの腕前がハッキリと分かってしまうのも特徴的だ。
佐々木さんは「ゲームの勝敗は特に考慮しない」とフォローをくれたけど、勝たなきゃ好印象は与えられないというのは変わらない。言葉では言っていないが負けは論外なはずだろう。
これは時雨にとって“夢“が掛かっている大一番。
いくら
それに……手加減出来るほどの余裕のある相手では無いことは時雨にだって分かっている。
手汗でベトベトな手を拭い、コントローラーをしっかりと掴む。自分の手に馴染む物ではなく、上手く扱えるかも分からない代物だけれど、やることに変わりは無い。
─────絶対にこのオーディションに受かるんだ!
☆☆☆
ひばりちゃんが『スマファミ』で使うキャラは────やはり、“インク・ロング”
高低差のあるマップをカラフルなインク+
時雨はもちろんひばりちゃんの配信含めアーカイブまで視聴している。だからひばりちゃんの愛用キャラや戦闘スタイルまでも大体が頭の中に入っていた。
確か、ひばり先輩は『スマファミ』でインク・ロングは“VIP”に入れてたっけ…
──VIPとはVIPマッチの略であり、オンライン対戦の高レート上位3%の実力のある人と一瞬で判断できる括りである。『スマファミ』にはレートという実力の基準があるが…、このVIPにキャラが達しているかいないかという簡単な強さの基準もある。
──あ、補足だけど。一応時雨の使うキャラもVIP入りしてます。まぁ……キャラ1体だけですけども。
自分が使いやすい
「おー、シズシズは“ガチナイト”使いなんだ~」
「あ、えと。はい…前から、このキャラが好きで……」
「アハハ、だよね。『星のカーヴィ』は神作ばっかりだもんね」
などと、軽い会話を交わしながらステージやらルールやらを決め…
佐々木さんが後ろで面白そうに観戦を始めると同時に、運命のVS 春夏秋冬 ひばりちゃんとの
☆☆☆
ステージはいつも通りの終点。
だが夕焼けの赤い光が照りつけ、互いに少しだけやりにくいステージだ。
そこに降り立った漆黒の騎士“ガチナイト”
赤い目を光らせ、金の剣を持ち、マントを靡かせる。
それに相対するのは紫髪で制服姿の“インク・ロング”
手にはインク散弾銃を持ち、ニヤリと笑みを零す。
…ヤル気満々である。
「……ふぅ、」
「さ~て、お手並み拝見だね!全力でぶつかり会お♪」
互いに緊張感がビリリとピリつく。既に2人ともガチの目線=ゲーマーの目線を画面に集中させる。
《……3……2……1………………レディ GOッ!》
試合開始前のアナウンスと共に、両者は動く。
時雨は一旦ステイ。相手の様子を見つつ、チャンスを伺いコンボへと繋ぐスタイル。だが──
「私のプレースタイルはわかってると思うけど、『全力の攻め攻め攻め!!!』だよぉぉ〜」
と、豪語したひばりちゃんは攻め攻めで距離を詰めてくる。インク・ロングがイカの姿に戻り、ステージを泳いでの高速移動。
「うっ……」
「えい、やぁぁー」
インク・ロングは機動力が高く、バースト力が弱い代わりにコンボが優秀。技の発生も案外早く、後隙も短い。そしてオリジナルコンボも意外としやすくパターンが読みずらい。正直、中々にやりづらい相手だ。
更に1番の難点は……インク・ロングの身体が小さいという事だ。インク・ロングは“ドツキーコング”や“グッパ”、“ガノンウルフ”の様に身体が大きくないキャラだ。
つまり────即死コンボが抜けやすく決めずらいということだ。
インク・ロングの攻撃の基本は投げ技から始まることが多い。1番スタンダードで効率よくダメージを稼げるコンボが多々あるのだ。
その行動をひばりちゃんはよく多用する。
そこまで読み切った時雨はその掴み攻撃を“その場回避”(その場で移動せずに攻撃を交わす事が出来るテクニック)を用いて、そのままカウンターを行おうとした。
──ガシッ!
「え?」
間違いなく、いつも通りのジャストタイミングで選択したはず…
だが、インク・ロングに捕まれ確定コンボを食らう。
空中で散弾銃をくらいながら投げられ、そのまま素早い連続の蹴り技(空中上攻撃)を食らわされる。
……なんで。タイミングが微妙に合わない!?
いつもやってる時はこんなことは無いのに。
あ…違う、多分。私の“感覚”が違うんだ。
────時雨が今までメインでプレーしていた環境はインターネット。その為、多少のラグは当たり前であり、時雨も気付かない内に感覚でラグを考慮に入れた動き方をしていた。
その為に多少の感覚のズレが起こっていたのだ。
それに気付くまで…時雨は微妙なミスを連続で行い、ほとんどダメージを与えられないまま先に2ストックを落とされてしまうのであった。
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