第二章 カグレが配信者を始めるまで……
第7話 天月カグレの”中の人”
至高であり、返礼をくらったとも言える…
──そんな配信を終え、口をぽかんと開けて放心状態の1人の少女。
黒髪のショートカットにきりりとした柔らかな瞳、オドオドとした自信の無い見た目とは裏腹に……酷く整った顔立ち。誰しもが口を揃えて「可愛い」と言わしめる程の美少女──
彼女の名前は
(別にこれと言ってキャラに寄せに行っては無いのだが、時雨にとってこれが仕事着であり気持ちがアガる。……正確に言えば素を出しやすい状態に早くなれるという理由がある)
性格は根っからの根暗でありコミュ障。自分に自信が無いのにも関わらず虚構な自分を何重にも作り上げ、それを強がって演じる。
正しく、今の煽り系配信者 天月カグレの“中の人”…に相応しいひねくれた最低なヤツである。 だが、それこそが煽り系配信者として憎まれる天月カグレのカラクリであった。
だけど……今日は遂に綻びが出来てしまった。
もう、前までのような状態には戻れない程の大きな綻びが…
“声バレ”
そういう配信者は徐々に低迷して、いずれ自然に消える。ノリで“顔出し”まで行く狂人も居るにはいるが、そういうジンクスというか雰囲気と言うか……流れというものが何となくこの業界にはあるのだ。
だから、この流れにそのまま身を任せて流されると……
──「天月カグレも終わりか」と言われるようになってしまう。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
涙を含む掠れた声を数秒掛けてゆっくりと吐き切る。
それほどまでに素性の公開というのは危機的なことであり、絶望的なことなのだ。
酷く項垂れた時雨は……今後の活動について悩ませれつつも同時に頭を抱えた。
頭の中は常に後悔という言葉でいっぱいであり、不安でいつもの精神状態を保てない程だった。
なんであんなにも攻めた企画をしてしまったのか……今考えるだけでも無謀と分かる。
「────どうして…、こんなことになっちゃったんだっけ?何処で道を踏み外しちゃったんだっけ…」
そんな、昔のことを懐かしそうに……いや、後悔の念を強く込み上げつつも時雨は思い出すのであった。もう取り返しのつかない事と分かっているはずなのに。
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