第4話 まだ……ヤレる
『うわ……まさかここまで実力差があるとわねw』
『それ笑、カグレよっわ〜』
『いつも煽ってるくせに今回はガチでやって普通に負けてるって感じだね』
『ま、でも。分かりきってた結果っちゃ結果じゃね?』
『あーそれな』
『やっぱりな、って感じ』
『やっぱあの人ヤバすぎるよ、なんでガノンウルフであんな動き出来んの?普通出来んて』
『あの人上手すぎて逆にヘンタイだもん』
『いやー、流石ラスボスだなぁ!』
天月カグレと森羅ムニとの2戦が終わったコメント欄は『カグレ弱すぎワロタww』というコメントよりかは、森羅ムニのプレイングを褒めるコメントの方がパッと見 多かった。
『──え、えっ!?周りはなんか既に勝負が終わったみたいな雰囲気なんですけど……?』
『だってそうやろ?』
『そそ、だって未だに森羅ムニは1ストックも撃墜されていない。2戦とも3スト残しの無傷の勝利なんだ』
『別にカグレ自体弱い訳じゃない。むしろ、かなり強い方だ。そんな強プレイヤーにまるで初心者をボコすかのように平然と簡単にあしらっているんだ!』
『じゃあ……つまり……?』
『森羅ムニすげぇーーーー!ってこと、OK?』
『う、うむ、ナルホドね。把握』
「……………………」
『まー、どっちにしてもカグレには頑張って欲しいわ』
『ぶっちゃけ森羅ムニが負ける姿も見てみたい感じはするしな』
『カグレもワンチャンあるレベルではあるからなぁ』
『やられっぱなしってもつまらんしな、多少はカグレにもやり返して欲しい感じはあるよな』
『いやー、本当に結果が楽しみだ!』
それは……稀に見られるカグレを応援する
だけど、今のカグレにはそれがとても温かく勇気をくれる大きなモノだった。
「……………………っ……」
諦めかけていたカグレの心に少しだけ灯火が宿る。
☆☆☆
時間的に言えば数分。だがその時間は怒涛の数分と言っても過言では無い。
その間、カグレは全力全開で集中してプレイした。そして結果が2敗。それも圧倒的な実力差を見せ付けられながらの屈辱的大敗である。
連続──────2敗ッ。
それはカグレにとってかなり追い詰められている状況であり、
あと残り1戦、負けたらカグレにとって不味いことになる…というのは言うまでも無い。今まで隠してきた秘密がバレる……それはこれからのVTuber人生に大きく関わる重要な事なのである。
確かに緊張や動揺があってコンボ精度が狂っていた事も多少は感じている。だけどそれ以前に森羅ムニのコンボ抜けが余りにも
フマファミのゲームの仕様上、ダメージを食らった瞬間にコントローラーのスティック操作をするとぶっ飛びの方向を少しだけズラせるという仕様があり、それを上手い具合に利用したコンボ抜けというテクニックがある。
ガチ勢なら当たり前のテクニックで様々なことにズラしを利用している。勿論カグレだってズラしというテクニックを理解し、コンボもズラし前提で技を繰り出している。
──だがしかし。それでもコンボが決まらず、ズラされ抜けられる。相当カグレのガチナイト対策をして来ているのだろうか?
カグレの技の癖、技の後隙……そして森羅ムニの十八番である高度な読み。
それが上手くカチあえば、まぁ……抜けられるワケって話だ。
カグレをわざわざスナイプして来たという時点で気付くべきだった。カグレ対策が既にされ、勝率が著しく低い状況ということに。
「はぁ……でも、もう泣いても笑ってもあと一戦だしなぁ」
小さな声で愚痴を漏らしつつ、流石に逃げられないと悟ったカグレ。
煽り系配信者としてはやってはならないタブー。
それは”成敗される“ということ、ただの煽り系プレイヤーならば対戦相手に煽り返される程度で済む……が、煽り系配信者なら勝手は違う。対戦相手、そして視聴者全てに『ざまぁwwww』と煽られる。ネット全てから叩かれ、バカにされる……と言っても過言では無い。
もしかしたら動画の切り抜きとかで、汚名をもっと拡散されるかもしれない。
それ程までに成敗されるのは勘弁して欲しいのだ。
まぁ、普通。そうならない為にそれなりの実力を身に付け、そういう行為をしないのがマナーなんだけどね。
ぶっちゃけそんな無茶な企画をやったカグレの自業自得であるのだが……それ程までにカグレは様々な事に追い込まれていたという囁かな理由もある。
「フゥ……まだヤレるいや、ヤル!」
気持ちをリセットし、カグレはコントローラーを握り締める。まだ…カグレは諦めておらず、闘志が残っていた。
最後の1戦……それにカグレは全てを賭ける覚悟だ。
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