第38話 バレンタインデー後編
「先輩、帰りましょー」
「良いよ」
部活を終え、2人は共に帰路につく。
「そういえば、麻友から貰いました?」
「貰ったよ」
「ふふっ、先輩に渡す人は居ても、先輩から貰う人は僕だけですからねぇ」
「そういう事だろうと思ったよ」
霧崎が、廣瀬に神門へのバレンタインチョコを渡すことを許可した理由は、神門に渡す人は居ても貰うのは霧崎のみという独占欲から来た理由だった。
「それで、今日も家に来るんだろ?」
「もちろんです」
「じゃあ、家で渡す」
「楽しみにしてます」
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神門の家に着き、先に霧崎を部屋に案内する。
「待たせたな」
「いえ、大丈夫です」
神門は、ラッピングしたやや大きめの箱を霧崎に渡す。
「開けてみて良いですか?」
「どうぞ」
霧崎は、神門から渡された箱を開ける。
中には、3つカップケーキが入っていた。
「これって…」
「カップケーキだな」
「どこの店で買ったんですか?。ラベルとかないですけど…」
「原材料なら、近くのスーパーで買ったぞ」
「えっと…。じゃあ手作りですか…?」
「ああ」
「すごっ!」
神門が霧崎に渡したのは、手作りのカップケーキだった。
「えっ、じゃあ、えっ」
「学年1位、語彙力どうした?」
「だって、先輩ってこんな器用な事が出来たんですか?」
「見ての通りだけど」
「もうっ…」
神門の態度にもどかしくなる霧崎。
「まあ、何でも良いから食べてみろ。それとも帰ってから食べるか?」
「いえ、こちらでいただきます」
「そう。じゃあ紅茶淹れてくるわ」
「お願いします」
神門は、霧崎の注文に応えるように、紅茶を淹れに行った。
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「お待たせ」
「ありがとうございます」
紅茶を淹れたティーカップを霧崎の前に置く。
「そのカップケーキはお前のだから、気にせず食べて良いぞ」
「ありがとうございます」
「俺は、今日貰ったものを食べるよ」
神門は、廣瀬から受け取ったチョコを取りだす。
「それ、麻友のですか?」
「そうだけど」
「じゃあ残りの箱は何ですか?」
「ん?」
「いや、鞄に入ってるラッピングされた箱ですよ」
「んー貰った」
「許可を出したのは麻友だけなのに…」
「それだから廣瀬さんを経由して俺のところに来たんだよ」
「なるほど…。それは抜け道でしたね…」
霧崎は、カップケーキを一口齧る。
「まあ別に良いですけど」
「そう」
「彼氏がモテてるって彼女からしたら嬉しさもあるんですよ」
「へぇ」
「まあ、先輩ってそういう心配は必要なさそうですけどね」
「それまたどうして?」
「なんか、浮気とかって面倒くさいとか思ってそうですもん」
「なるほどな」
「えっ、しちゃうんですか?」
「さあ」
「そこは断言して欲しいんですけど」
神門は、チョコを食べながら、霧崎は、カップケーキを食べる。
「というか、先輩」
「あ?」
「このカップケーキ、美味しいんですけど」
「それはどうも」
「スポーツも出来て、勉強も出来て、カップケーキも作れるってどんなイケメンですか?」
「こんなイケメン」
「それ鏡の前に立って言えます?」
「だから、お前は俺をどうしたいんだよ」
ケーキを食べ終えた、霧崎は、紅茶を口に含む。
「先輩ってお返しとかするんですか?」
「まあしないといけないだろうな。少なくとも廣瀬さんは、日本式バレンタインデーだったからな」
「なるほど」
「うん、廣瀬さん以外の人は、特定しようがないからなぁ。廣瀬さんに渡してもらうか…」
「…困りましたね」
「は?」
「んー。あっ、じゃあ逆にホワイトデーは僕から渡します」
「結局、日本式じゃねぇか」
「貰ってばっかりも気が引けます」
「そう思えるのなら、お前は生粋の日本人だよ」
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