第37話 バレンタインデー前編

「せんぱーい」

「んー」

「来週の水曜、バレンタインデーじゃないですかー」

「そうだな」

「期待してますから」

「あっ、俺が渡すのね」

「もちろんです。日本式バレンタインデーは、僕が面白くないです」

「いや、日本式バレンタインデーを面白い、面白くないでやってるのお前だけだよ」

「どうせなら、海外式バレンタインデーでやりましょうよ」

「面倒な事言ってるなぁ」


今日も、練習を終えた2人は、喫茶店でお茶をしていた。


「あっ、でも薔薇の花束は、置き場に困るのでちょっと…」

「お前は、世の男性に謝って来い」

「いや、分かっては居るんですけど…」

「まあ、言いたい事は分かるけども。それを口にするなよ」

「はい…」

「心配するな。花束は送らねぇよ。というか、中学生で花束って重くないか?」

「先輩からだと嬉しいですよ」

「ああそう」

「もっとときめいてくださいよ」


2人は、来週の水曜日のバレンタインデーに渡すものを話し合っていた。


「じゃあお前は何が欲しいんだよ」

「それは、先輩に任せます」

「面倒くさ」

「だって誕生日じゃないんですよ。愛を確かめる日なんです。先輩が僕に送りたいので良いんですよ」

「じゃあ、チョコで良いか」

「良いですよ。先輩の想いが大事なんです」

「その理論なら花束でも良いだろ」

「駄目ってわけでは無いんですよ?。どこに置こうか悩んでしまう事が問題なんです」

「ああそう」


バレンタインの日は、神門が霧崎に送ることで決定した。


「面倒くさいなぁ」

「彼女を目の前にして言いますか普通」

「言うよ」

「頭どうにかしてません?」

「してるかも」

「自覚があるんですね…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


バレンタイン当日。

授業を終え、掃除を済ませると神門は、いつも通り部室に向かった。

その途中、ある女子生徒が神門を呼ぶ。


「神門先輩」

「あ?」


神門を呼ぶ声は、女子バスケ部の1年である廣瀬麻友だった。


「廣瀬さんじゃん。どうしたの?」

「あの、これ受け取ってください」


廣瀬は、小さな紙袋を神門に渡す。


「これって…」

「バレンタインチョコです。一応、悠那にも許可を貰いました!!」

「いや、わざわざ許可取ったの?。律儀すぎない?」


廣瀬は、神門にチョコを渡すために、霧崎から事前に許しを得ていた。


「あと実はですね…」

「ん?」

「今、渡したのが私からなんですけど…。実は、こちらも先輩宛なんです…」

「は?」


廣瀬は、先ほど渡した紙袋とは別に、ラッピングされた箱を渡す。


「これは…?」

「えっと、悠那から許しを得たのが私だけだったので…。神門先輩に渡したい人って思いのほか居て…」


廣瀬は、次々にラッピングされた箱を渡す。

箱の大きさは大小問わず、合計6個ほど受け取った。


「あの…モテますね。神門先輩」

「ちょっと感動で泣きそう」

「えぇ!?」

「あと、ありがとうな廣瀬さん」

「っ!!」


廣瀬は、神門のお礼の言葉を受け取る。

その表情は、恥ずかしくも嬉しいという表情だった。


「あっ、先輩。私が悠那から許可を貰えたことなんですけど、聞いた時になんかニヤニヤしてたんですよ。何かご存知です?」

「さあな…」

「それ何か知ってますね?」

「どうだかなぁ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


廣瀬から、バレンタインチョコを受け取った神門は、部室に向かう。

部室に入ると、男子部員は賑やかだった。


「煉」

「どうした香威」

「お前、バレンタインチョコいくつ貰った?」

「さあ」

「彼女からは貰ったのか?」

「貰ってない」

「は?」

「どうやら海外式バレンタインがお望みらしいから」

「頭がいい奴の考えは分からんな」

「そういうお前は?」

「貰った」

「だろうな」


神門と香威が話しているが、他の部員もその話題で持ち切りだった。


「他のみんなは、貰った奴いるか?」


香威が部員に聞く。

すると、帰って来る答えは。


『『『『『貰ってないです』』』』』


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