第36話 復帰戦

「いやぁ、今日も冷えるなぁ」

「そうだな」

「アップするんだったら、俺もするから」

「お前、やっぱマジなの?」

「マジもマジ、大マジだよ」


今日は、年明け最初の大会。

地区予選等は無く、県内の中学がランダムにトーナメントを組まれ、試合を行う。


「お前が昨日、監督と話しているのを聞いてビビったぞ」

「まあなー」


神門は、まだドクターストップの期間を終えてはいないのだが、試合にでられるよう監督と交渉をした。

結果、スターティングメンバーとしては起用しないが、途中出る可能性があると言われていた。


「というか、今回は県大会だからな。煉が出る機会があんまりないような気もするけどな」

「それでも出る」

「黙って、ベンチに座ってろ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「煉先輩」

「あ?」


試合前にアップを始めていると霧崎が神門に話しかける。


「先輩、本気で出る気なんですか?」

「もちろん」

「何と言っても聞かない感じですよね?」

「おう」

「はぁ…。やっぱり先輩って時々、頭が悪くなるというかネジが無くなるというか」

「先輩に対して言う言葉は、それで合ってる?」


霧崎は、呆れたように神門にリストバンドを渡す。


「まあ、一応。お互い試合に出るかは分からないですけど、いつも通り交換しましょ」

「ああ」


神門も自らのリストバンドを霧崎に渡す。


「もし煉が試合に出るようでしたら応援してます」

「悠那の方もな」

「はい。それじゃあ、いつものしましょ」

「いつもの?」

「頬っぺたにキスです」

「それ定番化してたのか?」

「そーですよー。だから、しましょ」

「分かったよ」


神門は、諦め半分、応援半分の気持ちで霧崎の頬に口づけをする。


「ありがとうございます。僕からもどうぞ」


霧崎もお返しと応援の気持ちを込めて、神門の頬に口づけをする。


「じゃあ頑張れよ、悠那」

「頑張ってください、煉」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


試合が始まり、夜桜中男子バスケ部は、リードはしているが点数があまり伸びていなかった。


「神門」

「はい」

「腰はどう?」

「大丈夫です」

「第3Q残り2分。あなたに時間をあげる」

「はい」

「暴れて来なさい」

「はい!」


奥村監督に送り出され、選手交代をする。


「煉」

「ん?」


香威が神門に歩み寄る。


「このタイミングでお前が出てくるって事は、残り時間を煉に使わせるってことだろ?」

「ああ」

「じゃあ、お前にボールを託す。後は、勝手にしろ」

「ははっ、勝手にするよ」


試合が再開し、積極的に神門にボールが集まる。

パスを受け取った神門は、シュートフェイクからのドライブ、そしてそのままの勢いで踏み切り、ダンクを決める。


「勝手にしろって言ったけど、ここまでするかよ…」


香威は、神門のプレイを呆れながら見ていた。


「香威、ナイスパスだ」

「俺のパスのおかげだな」


その後も神門は、パスを受け取ると3ポイントシュートやレイアップ、ミドルジャンパーも決め、第3Qを終えた。


「みんな聞いて。神門のおかげで、流れが完全にこっちになったのは理解できているね?。ここまで、暴れてくれたんだから、他のみんなは、だいぶ自由に動けるはずよ。神門を下げたら、また点数取れませんでしたじゃ話にならない。それぞれ、点を取りなさい」

「「「「「はい!!」」」」」

「それで、神門は下がりなさい。もう、後は大丈夫のはずだから」

「はい」


そうして、第4Qが始まったが、第3Qの勢いのまま夜桜中が大量得点を獲得し、101対46で試合を終えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「煉せんぱーい」

「悠那」

「かっこよかったですよ」

「それはどうも」

「やっぱり先輩のその二面性、癖になっちゃいます」

「どういうことだよ…」

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