第34話 母親
年も明け、冬休みも終わった夜桜中。
新学期が始まったのだが、彼と彼女の日常は変わらない。
「先輩」
「あ?」
「今日で付き合い始めて8か月記念日じゃないですかー」
「そうだな」
「最近、マンネリ化してると思うんですよ」
「別れ話か?」
「話は最後まで聞いてください」
「はいはい」
部活を終えた2人は、神門の部屋で話していた。
「それでですね、僕のお母さんが彼氏である先輩に会ってみたいって言うんですよー」
「へー」
「聞いてます?」
「聞いてる聞いてる」
「本当ですかー?。まあ良いですけど、先輩には言ってなかったんですけど、僕って片親なんですよ」
「まあ、なんとなく気付いてたよ」
霧崎の家に何度か訪れたことのある神門は、霧崎が片親だという事を察していた。
「だから、僕が良くしてもらっている彼氏というか先輩にお礼がしたいって言うんですよ」
「言いたい事は分かったよ」
「そうですか?先輩の事だから、面倒くさいとか言いそうだったので」
「面倒くさいよ。でも、俺の態度によっては大事な娘の為に別れさせられるかもだろ?」
「それは駄目です」
「お前が駄目でもなぁ」
「駄目なので、絶対に来てください」
「分かったよ」
この話をした日の週末。
神門は、霧崎の家を訪れる事となった。
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「はぁ…」
神門は、霧崎の家に向かう途中、あまり気が進まなかった。
今日は、完全なオフの日で、自宅から向かっていた。
「だんだん、面倒くさくなってきた」
彼女に家は、歩いて行ける距離なのだが、神門の足取りはかなり重かった。
『ピコン』
スマホの通知が鳴る。
「あー」
神門は、メッセージを開く。
すると、そこには霧崎からのメッセージが届いていた。
『先輩、面倒くさくなってませんよね』
「よく分かっていらっしゃる」
霧崎に返信を送ると、さらに返信が返ってきた。
『迎えに行きましょうか?』
「いや、良いよ…っと」
神門は、覚悟を決め霧崎の家へと歩みを進めた。
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『ピンポーン』
霧崎の家に辿り着いた神門は、インターホンを押す。
すると、押して間もなく、扉が開かれた。
「初めまして。貴方が、神門煉君ね」
開かれた扉から現れたのは、霧崎悠那に似た女性だった。
背丈は、霧崎悠那と同じくらいで、長い黒髪の女性。
姉妹と言われてもおかしくはないような人だった。
「はい、初めまして。悠那さんとお付き合いさせて頂いてる神門と申します」
神門は、丁寧な挨拶をする。
「あら、ご丁寧にどうも。私は、悠那の母です。ここで立ち話も何でしょうから上がってください」
「はい、お邪魔します」
霧崎母に招かれ、神門は、家に入る。
リビングに行くと、先に霧崎悠那が座っていた。
「あっ、先輩。おはようございます」
「おはよう」
何故かよそよそしくなる2人。
「ふふっ、じゃあ神門君。悠那と一緒に座って待っててくれる?」
「はい、失礼します」
神門は、霧崎の隣に座る。
「せ、先輩」
「何だ?」
「何故か、僕まで緊張してきました」
「何でだよ」
「分かんないです」
霧崎母が、茶菓子の用意している間、2人はこそこそと話していた。
「お待たせ」
「あっ、ありがとうございます」
「ありがとう」
霧崎母は、コーヒーを2人の前に置く。
「じゃあ、改めて。霧崎悠那の母の
「こちらこそ、神門煉です。悠那さんとは、仲良くさせていただいています」
「中学生にしては、大人びているわね。というか、そんなにかしこまらないで良いのよ。それに、貴方の事は良く知ってるから」
「そうなのですか?」
「ええ、ほとんどが悠那から聞いた話だけどね。でも、試合は見た事あるよ」
「そうだったのですね」
「むしろ、どうして貴方ほどの人が悠那と付き合っているのかが不思議だったから、ちょっと聞いてみたくて家に呼んだのよ」
神門は、今回家に呼ばれた理由を知る。
「それは、自分でも不思議に感じてます」
「先輩!?」
「ですけど、彼女といると楽しいから、心地良いから付き合っているって感じですかね。こんな軽い理由ですみません」
神門は、噓偽り無く霧崎母に思いを伝える。
「そう…悠那の言う通り、嘘を憑くような人ではなさそうね」
「あの、悠那さんからはどんな話を…?」
「ふふっ、秘密です」
「そうです、先輩には教えられません」
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