第21話 練習試合
文化祭も終え、気温も低くなり始めた頃。
「ふぁぁぁぁ…。ねむ」
「煉、起きろ」
「起きてる」
「見れば分かる」
「ふぁぁぁぁ」
今日は、土曜日で学校は休みだが、部活は行われている。
それも、今日は練習試合で対戦校に向かわなければならない。
そのため、まずは夜桜中に集まり、バスで向かう事となっている。
「せんぱーい。いつもに増して目が細いですよ」
「うるせ」
「今日は、練習試合ですけど、リストバンド交換しましょ」
「はいはい」
神門と霧崎は、こういう試合の時は、必ずお互いのリストバンドを交換して、身に着けるようにしる。
「僕はまだ1年ですけど、練習試合とかには出れますから。応援、お願いしますね」
「はいはい」
今回の練習試合は、男女ともに同じ学校と練習試合を組まれてある。
そのため、こうして2人は話すことができているのだ。
「先輩は、今日何得点取る予定ですか?」
「そんなの決めてねぇよ」
「そうなんですか?」
「当たり前だろ」
「それじゃあ、先輩って何をモチベーションにしてるんですか?」
「さあな」
神門は、霧崎の問いに答えなかったが、1人それを逃さない男がいた。
「煉って、女の子にかっこいい所を見せることがモチベになってるんだろ?」
「香威は、何を言っているんだ」
香威は、キャプテンであり、ポジションがポイントカードという事もあって選手を観察する能力に長けている。
そのため、誰がどういう時に調子が良いかも把握している。
「へぇー、先輩って女の子にかっこいい所見せたいんですね。それってもしかして私ですかー?」
「ちげぇよ」
「えっ?私じゃないんですか?他の女なんですか。どこのどいつですか。早く言ってください。あっ、もしかして麻友ですか。そうなんですね」
「ていっ」
「いたっ」
暴走しかけていた霧崎を、無理やり止める。
「だって、先輩が変な事言うから」
「変な事を言ったのはお前だろ」
「私は、先輩を手放したくないだけです」
「じゃあ、変な勘繰りはよせ。俺は、お前だけだよ」
「じゃあ、証明してください」
「どうやって」
「法的な関係になりましょ」
「というと?」
「結婚しましょ」
「そうだろうと思ったよ」
霧崎は、やや独占欲が強い。
「分かりました。では、指輪を買いましょ」
「そういうのは、もっと大人になってからな」
「つまり、私とこれかも付き合ってくれるんですね?」
「ああ」
「嘘ついたら、先輩の家に凸ります。というか、先輩のお母さんに報告します」
「それは、やめてね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぁぁぁぁ」
「眠そうね、神門」
「そうっすねぇ」
「後輩たちが頑張っているんだから、応援しなさい」
「分かってますよ」
「まぁ、あなたはそういうキャラじゃないもんね。むしろ、裏で的確な指示をしてるみたいだし」
「指示は、監督の仕事でしょ」
「中学生なんて、大人の言う事よりも年の近い先輩の方が言う事聞くから」
「まあそんなもんすかね」
「いや、あなたは中学生なんだから、分かるでしょ」
「そうっすねぇ」
神門は、眠気に耐えながら、後輩たちの試合を見る。
今回の練習試合は、基本的に1年生を主体とした試合であり、2年生は、1試合だけして、それからは応援となっている。
「体冷えて来たなぁ」
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男子の試合を終え、女子の試合の準備が行われる。
「せんぱーい」
「んぁ?」
「次の試合、私出るので見ててください」
「はいはい」
「応援を込めてキスしてください」
「は?」
「煉のキスが欲しいです」
「分かったよ」
「じゃあお願いしまーす」
神門は、誰にも見られてないか周囲を確認し、霧崎の頬に口づけをする。
「頑張れよ、悠那」
「頑張って来ます、煉」
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