第20話 クレープと演劇と動画

文化祭当日、演劇を終えた2年3組は、教室で騒いでいた。

そんな中、神門煉は、衣装から制服に着替え、彼女である霧崎悠那のクラスへと向かっていた。


「ほらっ、神門先輩来てくれたよ」

「えっ」


霧崎の友人である廣瀬は、神門が来た事を霧崎に伝える。


「演劇が終わったからな、一応来てやったぞ」

「あ、ありがとうございます」

「悠那、神門先輩に渡すんでしょ」


廣瀬は、神門に聞こえないように霧崎の耳元で伝える。


「う、うん」

「どうしたんだ?」

「先輩」

「ん?」

「これ、どうぞ」

「これって…」

「僕が作ったクレープです。チョコクッキーと生クリームのクレープですけど、大丈夫でしたか?」


霧崎は、恥ずかしそうにクレープを渡す。


「ああ、大丈夫。ありがとうな」

「…先輩のくせに」

「ん?」

「いえ、何でもないです…」


神門は、クレープを受け取り一口齧る。


「美味しい」

「そうですか、良かったです」


神門は、クレープを食べていると、廣瀬が神門に伝える。


「実は、何度か失敗してて、頑張って作ってたんですよ」

「ちょっと麻友!!」

「悠那の頑張りを伝えなきゃ」

「教えなくて良いの!」


霧崎は、神門の為に何度もクレープを作り直していた。

より綺麗なものをあげたいという一心で、一生懸命作っていた。


「お前ってそんな健気な奴だったか?」

「僕だって、たまには先輩に可愛い所を見せたいんです」

「そう」

「はい」


お互い、恥ずかしさもあって、沈黙が続く。


『ピコン』


誰かのスマホの通知が鳴る。


「あっ、すみません。私です」


廣瀬は、スマホを取り出し、通知を確認する。


「あっ、一華先輩からだ」

「佐藤か?」

「はい。なんか動画が送られてました」


『ピコン』


佐藤から送られてきた動画を確認する前に、もう一件メッセージが届いた。


『ごめん!!

 私、悠那の連絡先持ってないから、渡しておいてくれる!?』


佐藤からのメッセージを確認し、了承の返信をする。

そのまま、霧崎に動画を送信した。


「女バスの方で何かあったのか?」

「いえ、悠那に渡して欲しい動画があったみたいなので」

「私に?」

「うん、悠那って一華先輩と連絡先交換してないでしょ?」

「そうだった。別に不便とかなかったから忘れてた」


霧崎は、制服からスマホを取り出し、先ほど廣瀬に送られた動画を確認する。


「これって!!」


その動画に映っていたのは、夜桜中のステージだった。

それも、演劇の映像だった。


「麻友!!一華先輩にお礼を伝えておいて!!」

「いいよ」


廣瀬は、霧崎に言われた通り、お礼を伝えてあげた。


「何が送られて来たんだ?」

「先輩には秘密です」

「何でだよ」

「女の子秘密なんです」

「ああ、そう」


神門は、送られたものの内容を教えてもらおうとするが、霧崎の拒否により諦める。


「神門先輩、こればかりはちょっと教えられません」

「廣瀬さんも言うなら、これ以上聞かないよ」

「そうしてもらえるとありがたいです」


廣瀬に言われた通り、これ以上聞かないようにする。


「へへへ」

「お前、すげぇ顔してるぞ」

「先輩よりマシです」

「俺って、いつもそんな顔してる?」 

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