第19話 文化祭
10月も末となり、本日は、ハロウィンだ。
そして、夜桜中の文化祭当日でもある。
「あはははははっ!!」
「可愛いじゃん、煉」
「お前ら…」
2年3組の教室にて、演劇に向け衣装に着替えていた。
しかし、全員が出演する訳では無く、小道具班、大道具班、そして演者班のように分かれていた。
大爆笑をする佐藤一華は、小道具。
その横で、見ている香威あさひは、大道具。
そして、笑われているのは、猫耳を着けた神門煉だった。
「マジで、やるとは…」
「良かったじゃん」
「あー、面白っ」
猫耳を着けた神門の役は、チェシャ猫だった。
「決まったものはもう、仕方ない。首を切り落とされても、無事な演技でもするか」
「具体的なシーンだな」
「ねぇねぇ、悠那にも見せてあげた?」
「見せてる訳ないだろ」
「じゃあ、今から行って来い」
「そうだよ、行って来なよ」
香威と佐藤に、教室から押し出されように、送り届けられた。
神門の衣装は、猫耳付きのオーバーオールに近しいものだった。
全身を覆う衣装は、秋とは言え、未だ暑い。
「面倒くさいなぁ」
彼は、1人呟き、霧崎の居る教室へと向かう。
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「はぁ…」
「悠那?」
「どうして僕たちの店番ってお昼なの?」
「そうだね、一番忙しいのにね」
霧崎は、同じクラスメイトで部活仲間の
昼の店番に向け、準備をしていた。
「先輩の演劇見たかったなぁ」
「先輩って神門先輩?」
「うん」
「あの人ってなんか不思議な先輩だよね。香威先輩みたいに、リーダーの雰囲気でもないし、一色先輩みたいに、オープンな人でもないしね。神薙先輩みたいに元気だったり、音無先輩みたいに優しそうな雰囲気でもないじゃん?」
「そうかな?。先輩って基本面倒くさがりなだけで、リーダーシップもあると思うし、こっちから聞けば、何でも話してくれるよ。あと、キスしてあげたら元気になったり、アイスとかも黙って奢ってくれるよ」
「そうなんだ」
「他にもね、彼は基本的に嘘もつかないの。黙ってることは多いけど、私に対して嘘は憑いた事無いと思う。それに、細かい所作も綺麗で好き…」
「はいはい、分かったから」
霧崎の惚気話を適当に聞き流す廣瀬。
そんな事も気付かずに、延々と話を続ける。
『ざわざわざわ…』
「ねぇ、麻友。なんか騒がしくない?」
「そうかも」
彼女らは、騒がしくなっている教室の外に目を向ける。
「先輩!?」
「ん?おお悠那」
「何ですか、その格好!?」
「チェシャ猫」
「本当になってたんですね!!」
霧崎は、衣装を着ている神門に驚きを隠せないでいた。
「神門先輩、お疲れ様です」
「ん?ああ、女バスの…」
「廣瀬です」
「ああ、廣瀬さんね。お疲れ」
廣瀬は、神門に挨拶をする。
神門も、それに返答する。
「ごめんなさい、先輩。先輩の演劇見れそうにないです」
霧崎は、申し訳なさそうに言う。
「気にすんな。そもそも見に来て欲しいなんて言ってねぇからな」
「それでもですよ。先輩のいろんな所を見たいんですから」
「そうかい」
霧崎は、神門のクラスの演劇を見れないため、元気がない。
「というか、神門先輩ってどうしてこちらに?」
「んぁ?いや、香威と佐藤が悠那にこの姿に会いに行って来いって言われて追い出された」
「そうだったのですね」
廣瀬は、ここに来た理由を神門に尋ね、事情を知る。
『ザザ…。えー12時開演の、2年3組の演劇15分前となりました。出演される方は、ステージ裏にお集まりください』
2年3組のキャストの招集を伝える放送がされた。
「もう、そんな時間か。お前らも、これから店番なんだろ。頑張れよ」
「ありがとうございます」
「はーい」
神門の言葉に返事をする2人だが、広瀬の方は先輩に対する敬意を込めたお礼を言い、霧崎は、未だに演劇が見れないことで拗ねていた。
「ほら、拗ねてないで先輩を見送ってあげなよ」
「うー」
「放課後、買い物に付き合ってやるよ」
「本当ですか!?では、行ってらっしゃいませ!!」
「現金な奴だな…」
彼女らは、神門を見送り、店番へと戻った。
そして、神門の方は、放送の指示に従いステージ裏へと向かった。
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「ふぁぁぁぁ」
「神門君、もっとやる気を出してよ」
「はいはい」
クラスメイトにより、叱責される神門。
他の演者もかなり集中しているようだった。
「(ここまで来たら、やるしかないか…)」
神門は、密かに覚悟を決め、幕が上がる。
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