第17話 キスマーク
「では、飲み物取って来ますので、くつろいでいてください」
「どうして、こうなった…」
今、神門は、霧崎の家に来ている。
霧崎に招かれたのだが、家には仕事なのか誰も居なかった。
霧崎悠那の部屋にて、待つ神門。
彼女の部屋に置いてあるソファーに腰をかける。
「あいつの部屋って、割と落ち着いているな」
霧崎の部屋は、物がさほど多いわけでは無く、整理整頓も行き届いていた。
神門が、部屋でくつろいでいると、ドアが開かれ、飲み物を持って来た霧崎が入って来た。
「お待たせしましたー」
「おう」
「先輩ってコーヒーで良かったですか」
「大丈夫だぞ」
「良かったです」
飲み物をソファーの前のテーブルに置き、霧崎は神門の隣に座る。
「それで何しましょうか」
「お前が呼んでおいて、決めてないのかよ…」
「へへへ」
霧崎は、神門の肩に頭を乗せる。
「先輩って良い匂いしますね」
「そうか?」
「はい、香水とかつけてるんですか?」
「一応」
「どこで買ってるんです?」
「ネット」
「現代っ子め」
「お前もだろ」
霧崎は、神門の首筋に顔を近づけ、匂いを嗅ぐ。
「この匂い、結構好きです」
「お前もつけてみるか?」
「良いんですか?」
「ああ」
神門は、鞄から持ち歩いている香水を取り出す。
「はい」
「ありがとうございます」
霧崎は、香水を受け取り手首につける。
「先輩の匂いだ…」
「そう」
「なんか蕩けちゃいそうです」
「それなら使うのをやめとけ」
「えー」
「先輩とお揃いが良いんですよー」
「はいはい」
霧崎が神門に抱き着く。
「暑い」
「クーラーの温度下げましょうか?」
「離れてくれるだけで良いんだよ」
「嫌です」
「何でだよ」
「いちゃつきたいんです」
「そうですか」
「はい!」
霧崎は、抱き着く力を強くする。
「先輩」
「なんだ?」
「キスマークつけても良いですか?」
「だめ」
「つけますね」
「話を聞け」
「首筋がやっぱり妥当ですかね」
「おい」
「はむっ」
「うっ」
霧崎は、神門の首筋に吸い付く。
「ぷはぁ」
「いっ…」
「へへへ、痕ついちゃいましたね」
「ていっ」
「いたっ」
首筋から離れた、霧崎の頭を軽くチョップする。
「何で叩くんですかー」
「何でもくそもあるか。急に首を吸い付きやがって」
「美味しかったです」
「馬鹿なのか」
「これでも学年主席です」
「その返答は、何度聞いたことやら」
「先輩が言わせてるのかと思ってました」
「なわけあるか」
神門は、抱き着く霧崎を引きはがす。
「鏡見ます?」
「ああ」
「どうぞ」
霧崎は、手鏡を神門に渡す。
「赤くなってるな」
「痕になってますね」
「何でそんな他人事なの?」
「へへ」
鏡で首筋を確認する神門を横に、ニヤケがとまらない霧崎。
「明日、始業式だぞ」
「そうですね」
「どうしてくれんだ?」
「お揃いにしましょ」
「というと?」
「どうぞ」
霧崎は、首筋を神門に見せる。
「それは?」
「キスしていいですよ」
「意味が分からん」
「先輩が、1人だと恥ずかしいとか言うから」
「一言も言ってないんだが」
「そうでしたっけ?」
「そうだ」
「まあ、面倒くさいことは良いんで、キスマークつけちゃってください」
「はぁ…」
「あのですね、先輩。これでも、本気で先輩の事好きなんですよ。あんまり邪険に扱われると、ちょっと傷つきます」
霧崎の言葉に、黙ってしまう。
「分かったよ…」
「よしっ、ではどうぞ!!」
神門は、霧崎の首筋に吸い付く。
「あんっ」
神門は、先ほどの霧崎のキスにやり返すように、強く吸い付いた。
「ふぅ、これで良いか?」
「先輩ってもしかして、こういう経験あるんですか?」
「ねぇよ」
「僕が初めて?」
「そうだ」
「良かったです」
「そう」
「はい」
キスをし終えると、落ち着きを取り戻した。
そんな事をしているうちに、時間は過ぎていき、陽も沈み始めていた。
神門が帰宅をしようと、霧崎の家を出ようとした時。
「そういえば、先輩」
「ん?」
「連絡先交換しましょうよ」
「あー」
「僕たち付き合って2ヶ月以上経ってるじゃないですかー」
「そうだな」
「それなのに、連絡先も交換してないってどうなってるんですか」
「いや、聞かれてないし」
「聞けないですよ!!。という事で、勇気を出して聞いたので、教えてください」
「いいよ」
「良いんですね!?」
「ああ」
2人は、スマホを取り出す。
中学生ではあるものの、2人は、成績も良いため親に買ってもらっていた。
神門の場合は、両親が共働きということもあって、連絡が取れないと不便だからという理由もあった。
霧崎の場合は、学年主席を維持しているためご褒美で買ってもらっていた。
「先輩って僕以外の女の子の連絡先持ってますか?」
「持ってないけど」
「良かったです」
「うん」
「もちろん、僕も男の人の連絡先は、先輩が初めてです」
「あっそ」
連絡先を交換し終え、神門は家へと帰った。
翌日、キスマークを付けた2人は、それぞれのクラスでちょっとした騒ぎとなった。
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