第16話 公園のベンチ
「あぁ…。夏が終わる…」
「終わっちゃいますねぇ」
夏休み、最終日。
部活を終えた、神門と霧崎は、コンビニでアイスを買い、公園のベンチで食べていた。
「部活ばっかりだったなぁ」
「そうですねぇ」
「オフの日は、お前と毎回会ってた気がするんだけど」
「そうですねぇ」
「暑ぃ…」
「そうですねぇ」
「お前、暑さで頭やられてないか?」
「そうですねぇ」
「おいっ」
「はは、冗談ですよ。でも、楽しかったですよね」
「…まあな」
「先輩がデレた」
「うるさい」
2人の関係は相変わらずだった。
付き合っては居るのだが、無気力な先輩と生意気な後輩という関係値は、変わらない。
「先輩って夏休みの宿題終わりました?」
「終わってるよ。先輩を舐めるなよ」
「おー。流石、先輩です」
「先輩は偉大なんだよ」
「まあ、どうせ先輩のことですから、宿題を出されたら、授業中に隠れてやってたりしたんでしょうけど」
「よく分かったな」
「なんか、先輩の事分かってきた気がします」
「おめでと」
「へへ、ありがとうございます」
神門は、夏休みが終わる喪失感により、遠い目をする。
対して、霧崎は、神門煉という男を徐々に理解してきたことの喜びでだらしない笑顔を見せる。
「そういえばだけど、お前髪伸びて来たな」
「おっ、気付きました?。先輩とお揃いにしようかと思いまして」
「へー」
「反応薄いなぁ。可愛い彼女が先輩の真似をしてるんですよ?。少しはときめいてください」
「別に、髪型にせよ、何にせよ。好きなので良いんじゃないか?」
「じゃあ私が好きな、先輩と同じ髪型にします」
「そう」
「というか、夜桜中って変わってますよね。髪型に関して、寛容過ぎじゃないですか?」
「まぁ、やることやっていれば良いみたいなとこあるからな。実際、成績が良かったら、大して怒られないし」
「本当に、不思議な学校です」
2人は、アイスを食べ終え、ベンチから立ち上がる。
「先輩」
「あ?」
「先輩の家とか行ってみたいです」
「前向きに検討しておく」
「いや、それ絶対にしない奴ですよね!?」
今日の練習は、午前中で終わりだったため、午後からはオフなのだ。
しかし、基本的には部活で疲れているため、遊びに行くのも億劫なのだ。
「じゃあ、私の家に来ます?」
「は?」
「いや、先輩の家が駄目なら、私の家に来ますか?」
「何故、家に行く話になっているんだ?」
「クーラーの効いた部屋でイチャイチャしましょうよ」
「面倒くさそう」
「本当に、先輩って面倒くさがりですね。先輩こそが面倒くさいです」
無気力な神門に、頬を膨らませる霧崎。
「というか、行って何するんだよ?」
「ベッドでイチャイチャしましょ」
「あほか」
「いたっ」
霧崎の言動に対して、神門は、霧崎の頭にチョップする。
「乙女の頭をそんな叩かないでください。DVですか?」
「Domesticの意味を調べてこい」
「えっ、私たち家庭を持つ関係ですよね?」
「勝手に入籍するな」
「新婚旅行は、どちらにしますか?」
「勝手にしろ…」
「なるほど…。まあ先輩の事ですから、海外は面倒くさがりそうなんで、国内にしますか」
「はいはい」
神門は、霧崎の発言をスルーする。
しかし、霧崎の発言は冗談ではない。
本気で、新婚旅行の行き先を考えている。
「それで、私の家に行きましょうよ~」
「女の子が、そんな簡単に男を家にあげるなよ…」
「先輩だけです♪」
「そうですか…」
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