第14話 合宿

「着いたぁ」

「海だー!」

「「「おー!!」」」

「「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」」


夜桜中バスケ部は、合宿に来ていた。

海に面している臨海部に合宿所があり、今年から合宿が行われる。

去年までは、人数の関係で開催できていなかったのだが、1年生の加入により、行うことが可能となった。

そして、その合宿は、男子だけでなく、女子も共に参加している。


「じゃあ、荷物を置いたら、砂浜に集合。昼は、ここで練習、夕方から体育館の方で練習をするよ」


監督の指示を聞き、荷物を置く。

荷物を合宿所に置いた人から、外に行き、集合する。


「それじゃあ、まずは砂浜をランニング。その後、ダッシュ、フットワーク、ディフェンス練習もしようかな」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あぁ…きつ…」


練習を終え、それぞれお風呂を済ませた後、部屋で休んでいた。


「なぁなぁ、女子の部屋って隣りだよな」

「そうだけど、何で?」

「遊びに行こうぜ」

「面倒くさ…」


一色が女子の部屋に行こうと部員を誘う。


「ってか、何でそんなに元気なの?」

「お風呂上がりの女子って、普段の何倍も可愛くね?」

「知るか。そんなに行きたいなら一人で行って来い」

「えぇ…。でも他の皆は行くみたいだよ」

「は?」


一色の誘いに乗ったのは、神門以外の部員全員だった。


「というか、香威は?あいつも女子の部屋に行ったのか?」

「あいつは、さっきから居なかったぞ」

「マジ?」


どうやら、香威はこの馬鹿騒ぎには居なかったようだ。


「じゃあ行くぞー!!」


一色の声に続くように、男子部員が部屋から出ていく。


「何なんだ、こいつら…」


半ば、呆れるように神門は、皆が出て行った扉を見つめる。

すると、扉が開かれ、香威が入ってくる。


「あれ?みんなは?」

「女子の部屋に行った」

「そうなんだ」

「お前はどこ行ってたんだ」

「サウナ」

「この合宿所、そんなのあったのか!?」


この合宿所は、夜桜中が持っている合宿所であり、設備はかなり整っていた。


「整ったわ」

「そうですか…」


香威は、今日、着ていた服を鞄に入れる。


「なぁ、煉」

「んー?」

「将棋しようぜ」

「良いよ」


香威は、鞄の中から持って来た将棋盤と駒を取り出す。


「負けたらジュース1本な」

「後悔するなよ」


香威から罰ゲームを持ち掛け、神門は、それに同意する。

すると結果は…。


「なぁ、煉」

「何だ?」

「ここから勝ちようがないように見えるんだけど」

「だろうな」

「王しか居ないんだが」

「革命でも起こったんだろうな」

「一揆かも」

「どっちにしろ、王が落ちるな」


神門による圧勝だった。

盤上は、香威の駒は、王将のみであり、残りの全ては神門のものとなっていた。


「これぞ、蹂躙」

「もう投了だよ!」


ジュースは、香威が奢る事となった。




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『コンコンコン』


男子の部屋の扉がノックされる。


「どうぞー」


『ガチャ』


「失礼しまーす」


神門の返事を聞き、扉を開けたのは、霧崎だった。


「先輩、どうして私たちの部屋に来ないんですかー。恋バナとかしてるんですよ?」

「いや、行く理由が無いし」

「私に会いに来るという理由もですか?」

「面倒じゃん」

「むぅ…」


神門の返答に、不満を持つ霧崎。


「じゃあ良いです。ある事無い事言ってくるので」

「やめろ。というか、お前がここに来たんだから良いだろ」

「まあ、良いですけど…。それより先輩」

「何だ?」

「ちょっと、外歩きませんか?」

「やだ」

「えっ!?そこは、うんって言う所ですよね!?」

「面倒くさいじゃん」

「女の子が誘ってるんだからついて来てくださいよ!!」

「うるさいなぁ」

「お願いしますよー!!」

「分かったから、騒ぐな」


霧崎に押し負け、外へと出る。


「女の子は、誰しも憧れるシチュエーションですよ」

「これが?」

「はい!」


2人は、夜の砂浜を歩く。


「夜の砂浜って良くないですか?天気も良いから月明りも丁度良いし」

「かもな」

「先輩って、ひねくれているのか、クールなだけなのか分からなくなってきました」

「それは大変だな」

「でも、煉のそういう所好きです」

「急な名前呼びは、良くないぞ」

「そういう気分なんです」


2人は、立ち止まる。


「煉」

「ん?」

「キスしたいです」

「直球だな」

「駄目ですか?」

「良いぞ」

「ふふっ、ありがとうございます」


月明りに照らされながら2人は、優しくて甘い口づけをする。

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