第12話 ネクタイ

「試験終わったなぁ」

「俺はお前のその状態を何度見れば良いんだ?」


1学期の期末テストを終え、練習もより本格的に全国大会に向けたメニューとなった。

そんな彼らは、今部室にて準備をしていた。


「梅雨も明けたんだ。窓を全開にして、外を眺めさせろ」

「知るか。さっさと着替えろ」

「へいへい」


着替えを済ませ、コートに向かった。


「集合!!」


奥村監督の呼び声に男子バスケ部は、集まる。


「大会まで時間はないから、気を引き締めるように。去年は、主力メンバーが不安定だったから、全国大会に行っても2回戦で負けてしまった。だけど、今年は違う。夜桜中の力を見せるよ!!」


『『『はい!!』』』


監督の言葉を聞いた部員は、気合を込めた返事をする。

その返事を合図に、練習が開始された。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「今日の練習は痺れたなぁ」

「そうだなぁ」


練習も終わり、彼らは、部室に倒れこんでいた。

着替えは済ませたのだが、帰る気力が無いと言ったところだ。


「なんか、このまま眠りそう」

「寝たら、誰も起こさねぇからな」

「マジか」


とは言え、過酷な練習を終え、誰も動けないでいた。


『コンコンコン』


部室の扉がノックされる。


「はーい」


キャプテンの三神の返事により、扉が開かれる。


「失礼します。あの…大丈夫ですか?」


入って来たのは、霧崎だった。


「奥村先生が見てこいっていうので、来たのですが…」


恐る恐る、入室した霧崎だったが、奥村監督に言われて様子を見に、来たようだった。


「大丈夫では無いなぁ」

「煉先輩は、大丈夫じゃなさそうですね…」


霧崎は、倒れている神門を見つめる。


「神門の事を任せても大丈夫か?」


三神は、霧崎に神門の事を任せ、部室を出て行った。

それに続き、帰り支度を済ませた部員は、次々と帰宅する。


「ほら、帰りますよ」

「肩貸して」

「先輩の身体、細いとは言え、僕からしたら重いんですから」

「はいはい」


身体を起こした、神門は霧崎にもたれかかる。


「重いです」

「すまんな」

「先輩って練習後、ちゃんと制汗シートとか使ってるんですね」

「当たり前だろ」

「良い匂いです」

「そりゃどうも」

「というか、ネクタイくらいちゃんと結んだらどうですか?」

「暑いだろ。帰りくらい許してくれ」

「だめです。そんなだらしない先輩は見たくないです」

「はいはい」


神門は、霧崎の言う通り、ネクタイを綺麗に結ぶようにした。


「めんどくさいなぁ…」

「僕が結んであげますよ」

「おい」


霧崎は、神門のネクタイを受け取りに結び始めた。


「こうして見ると新婚夫婦みたいですよね」

「何言ってんだ…」

「僕だったら、いつでも結んであげますよ?」

「必要ない」

「まあまあ、そう言わずに」

「ネクタイくらい自分で結べるよ」

「子供は1人、もしくは2人は欲しいですね」

「いや、知るか」

「目元は、先輩みたいな細目が良いです」

「お前が良くても、子どもは嫌がるかもだぞ」

「ふむ…。確かに、そう言われるとちょっと弱っちゃいますね」


ネクタイを結び終えた、霧崎は神門から離れる。


「というか、先輩。ネクタイよりも、その髪の方が暑くないですか?」

「暑いよ」

「暑いんですね!?」


神門の髪型は、季節関係なく、ミディアムウルフ。

本人曰く、やりたい髪型だからという理由のみだった。


「悠那ってショートだよな」

「先輩は長い方が好きなんですか?」

「似合っていればなんでもいいよ」

「先輩って、そういうところ優柔不断ですよね」

「堅苦しいのは苦手なんだよ」

「先輩のそういうところ好きですよ」

「そう」


2人は、荷物をまとめ部室をあとにする。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「せんぱーい。アイス奢ってください」

「俺は、お前にいくら奢れば良いんだ?」

「そうですね…。じゃあ、今日は私が奢ります」

「急に親切だな」

「へへへ」

「気持ち悪い顔してるぞ」

「先輩よりマシです」

「お前って本当に俺の事好きなの?」

「奥さんになりたいと思うくらいには」

「過程が飛んでいるんだよな」

がお望みですか?」

「なんだろう。何故か、別の意味に聞こえてくる」

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