第10話 決勝とキス


「今日は、決勝だけか」

「あんた、本当にすごいわね」

「だろ?」


神門は、自宅にて今日の決勝の準備をしていた。


「まあ、やることやって来なさい」

「あいよ」

「私も応援に行くから」

「おう」


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「煉」

「霧崎か」


今日の試合は、男子の決勝のみのため、試合開始時間も午後からだ。

夜桜中男子バスケ部は、会場には午前中の内についており、ウォーミングアップをしていた。

そんな中、霧崎は、煉を呼んでいた。


「今日の試合勝ったら、結婚してください」

「いや、試合に出るの俺だし、そういうのって俺が宣言するもんじゃないの?」

「宣言してくれるんですか」

「しない」

「なんでですか!?」

「何でも何も、そもそも俺は、お前に告白もされても無いし、しても無いよ」

「じゃあ、今言います。私と付き合ってください」

「良いよ」

「良いんですか!?」

「うん」

「あんなに、頑なに認めなかったのにですか?」

「いや、だから告られてないから」

「融通が利かない先輩ですね」

「お前は、好きなのか嫌いなのかはっきりしろよ」

「好きです」

「あっ、そう」

「反応薄っ!!」


こうして、2人は付き合う事となった。


「いや、今!?」

「どうなっているの、あの2人!!」


香威と佐藤は、2人が付き合う現場を見ていた。


「まあ良いや。負ける理由も無いし、勝って来るよ。それに県大会だ。こんなところで負けるかよ」

「うん、応援してる」


神門は、霧崎のエールを受け取る。


「煉」

「ん?」


『ちゅっ』


霧崎は、神門の頬に口づけをする。


「どうですか、可愛い後輩のキスは?」

「そんな易々とキスなんかするなよ」

「先輩にだけです♪」


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霧崎のキスを受け取った、神門は、いつもより集中力が高まっていた。

そうして決勝は、124対51という結果となり、夜桜中の圧勝だった。

県大会とは言え、決勝でここまで点差が開くのは稀だった。

そして124点という得点の内、50得点が神門が取ったものだった。


「全国大会に出場が決まったな」

「お前、そんなに点取れたのか?」

「なんか、調子良かったから」

「凄いな」


試合が終わり、そのまま閉会式となった。

整列しながら、神門と香威は試合の事を話していた。


「50得点って取れる奴居るんだな」

「目の前を見てみろ」

「しっかりと視界に入ってるよ」


その頃、キャプテンが表彰式にて、賞状をを受け取っていた。


「にしても、無名校が名を轟かせるのって良いもんだなぁ」

「それは言えてる」



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閉会式を終え、帰り支度をする。


「にしても、今日は疲れたぁ」

「お疲れ様です。今日は、一段と気合入ってましたね」

「そうだな」

「そんなに結婚したかったんですか?」

「負ける理由が無いだけだよ」

「ふふっ、そうですか」

「ああ」


神門は、荷物をまとめながら、霧崎の話を聞いていた。


「先輩って本当にオンとオフの差が激しすぎるというか何というか。オフの時ってちょっとクールですよね。二重人格なんですか?」

「知るかよ。そんなに変わらんだろ」

「いいえ、変わってますよ。あっ、でも変わってないのはその目の細さですかね」

「人の容姿を馬鹿にするなよ…」

「私は、馬鹿にはしていません。むしろ愛おしく思っています」

「あぁ、そう…」


霧崎は、神門の目を見つめていた。


「それはそうと、神門先輩が勝ったのでご褒美をあげます」

「いや、別に良いけど」

「ご褒美をあげます」

「いや…」

「ご褒美をあげます!!」

「…何をくれるのでしょうか」


霧崎の圧に押された神門は、話を聞くことにした。


「唇にキスはどうですか?」

「あほ」

「なっ!」

「そういうのは大事にしろよ」

「今更ですか」

「ああ」

「ああもう、うるさいです。大人しくキスされてください」

「お前がしたいだけじゃねぇか!?」

「はい!!」


2人が押し問答している間、他の部員はその光景を眺めるだけだった。


「一瞬ですから!!」

「そういう問題じゃねぇ…」

「ああもう!!えいっ!」

「うおっ!」


霧崎は、神門を押し倒す。


「大人しくご褒美を受け取ってください…!!」

「他のご褒美にしてくれ…!!」

「じゃあ何が良いんですか?」

「アイスとかどうだ!?」

「はぁ…仕方ないですね。それで手を打ちましょう」

「今日は、解散して明日の放課後で良いか?」

「良いですよ」


こうして、その日は解散することとなった。


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