第9話 リストバンド
「いやぁ、壮観だなぁ」
「俺たちは、見慣れた方だろ」
県大会の会場に来た、夜桜中男子バスケ部。
観客の多さや、他校の貫録をみて思い思いの感想を胸に秘める。
応援として、夜桜中女子バスケ部も来ていた。
「煉、これ」
「ん?」
霧崎は、煉に普段自分が身に着けているリストバンドを渡す。
「ありがとうな」
「うん、頑張ってね」
「おう」
神門は、霧崎のリストバンドを受け取り、そのまま腕に着ける。
「いや、あの2人ってマジで付き合ってないの?」
「どうなってるんだろうね」
香威と佐藤は、2人を見守っていた。
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試合時間となり、ベンチにて奥村監督の指示を聞く。
「まずは、初戦。油断も慢心もしないでね。あなた達は確かに強い。だけど、油断があなた達を弱くする。自分たちが強くありたいと思うんだったら、徹底的に相手を倒して来なさい!!」
「「「「「はい!!」」」」」
スタメンを中心に返事をする。
彼らは各々の想いと誇りを持ち、コート上に立つ。
「(なんだかんだ言って、あいつもリストバンドを大事に使ってんだな)」
神門は、霧崎から受け取ったリストバンドを見つめる。
『一回戦の試合を開始します!!』
「「「「「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」」」」」
そうして、試合が始まった。
初戦ということもあり、試合は夜桜中の圧倒的リードを獲得した。
1Qだけで、神門が16得点、香威が6得点、三神が7得点、一色が10得点、音無が4得点だった。
2Q以降も、一方的な戦いにより圧勝した。
最終的スコアは、神門が41得点、香威が14得点、三神が13得点、一色が24得点、音無が12得点だ。
104対42点という大差で夜桜中が勝利した。
「なんか神門、今日調子良くなかったか?」
「なんか、気合入り過ぎたわ」
「スリーとか一本も落としてないよな」
「みたいだな」
「何で他人事なんだよ」
神門と香威が先ほどの試合を振り返る。
「煉!!」
「霧崎」
「さっきの試合凄かったです!!」
「そりゃどうも」
「私のリストバンドのおかげですかね」
「…そうかもな」
「ふぇ!?」
神門による不意打ちに驚きを隠せない霧崎。
「先輩のくせに、かっこいい事言いやがって…」
「なんか言ったか?」
「い、いえ。なんでもありません。というか、先輩ってどうして試合とそうじゃない時にかっこよさが変わるんですか?」
「知るかよ」
「普段は、猫みたいにのんびりとしてるのに。こういう試合の時になると、かっこよくなるってどんな主人公ですか」
「いや、知らんわ」
霧崎の小言を受け流す神門。
「まあ良いです。午後からも試合でしょうから、ゆっくり休んでください」
「あいよ」
神門は午後の試合のために休養をとることにした。
軽く、エネルギー補給のために軽く食事をとり、ストレッチをする。
「はい、みんな。さっきの試合はオフェンス面では申し分ない内容だった。でも、ディフェンスがまだ甘い。マンツーマンなんだから、自分が抜かれたら終わりだと思いなさい。ヘルプを頼りにしないで。良いね?」
「「「「「「はい!!」」」」」」
監督の指示を聞き、試合の準備をする。
入念に体のケアをし、試合に出るメンバーは集中力を高めていく。
「1年は、2,3年のサポートをお願い。そして、試合に出るメンバーと他校の選手のプレイを見て、学びなさい」
「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」
午後の試合の時間となり、夜桜中男子バスケ部はコートに向かう。
彼らは、誰一人例外なく、集中力を高めていた。
「お前ら、驕りは許さない。この試合、必ず勝つぞ!!」
「「「「おう!!」」」」
スタメンは、円陣を組み、三神の言葉に返事をする。
2試合目は、少なからず1試合目よりも厳しい内容になるように考え、浮足立つことなく、冷静に試合に臨んだ。
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「煉~」
「おう」
「試合、お疲れ様です」
「そうだな」
「二試合とも圧勝でしたね」
「まあな」
「油断しなくて関心です」
「後輩に心配されるような先輩になったつもりはないよ」
「流石です」
「あとは、明日、明後日まで勝ち残って全国に出るだけだ」
「ですね」
試合が終わり、神門と霧崎は2人、会場の外で話していた。
「先輩、良かったらリストバンド交換しませんか」
「良いけど、何で?」
「大会の時はお互いのを着けて、練習の時は自分のを着けるようにしましょうよ。そしたら、何か特別感出るじゃないですか」
「そうだけど…」
「それに、そうした方が先輩やる気出るでしょ」
「俺は、いつだってやる気出てるけどな」
「嘘ですよね。大人しく認めてくださいよ。私のリストバンドを着けたからやる気が出たって」
「はいはい」
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