第7話 挨拶

「開会式終わったぁ」

「だな」

「他のメンバーは?」

「もう戻ったよ。というか、明らかに別行動をしているのは俺たちだからな」

「えぇ~」


神門と香威は、バスケの大会の開会式が終わり、トイレに着ていた。


「にしても、人多いなぁ」

「だな」

「さすがは、予選だ」

「予選なら人は少ない方だろ」


今日の大会は、全国大会に出場するための大会の地区予選だ。


「今日って俺たちは、何時から?」

「13時から」

「それで今は?」

「10時」

「遅いなぁ」

「仕方ないだろ。俺たちは、シードなんだから」

「飯食わない方が良いかなぁ」

「エネルギー補給だけしてろよ」

「はいよ」


2人は、トイレを済ませ、他のメンバーと合流する。


「そういえば、今日も着けてるのか?」

「何を?」

「リストバンド」

「あぁ、着けてるよ」

「急に練習の時に着けて来たから何事かと思ったわ」

「まあな」


香威が煉のリストバンドを着けているのを確認していた。


「そこ2人。まさか。油断はしていないでしょうね?」

「大丈夫っすよ」

「俺の方も大丈夫です」

「それなら良いけど。ここで負けたら、三神は引退になる。だけど、こいつが引退するのは今じゃない。それだけを理解してくれればいいわ」

「「はい」」


奥村監督による、檄が飛ばされる。

今回の大会は、負けたらそこで3年生は引退となる。

つまり、夜桜中、男子バスケ部キャプテンの三神希空の引退を意味する。


「俺は、まだ引退したくないぞ」

「分かってますよ」

「俺たちの誰一人、キャプテンになる気は無いから大丈夫ですよ」

「それはそれで、心配なんだけど」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「女子は負けてしまったかぁ」

「そうみたい」

「なるほどなぁ」

「何か言いたげだな」

「いいや、香威は、彼女にかっこいい所見せてあげないとか思ってんのかなぁって」

「しばくぞ」


神門と香威が言い争っていると、他のメンバーは気にせずコートに入場した。


「おい、馬鹿共」

「「すみません…」」


奥村監督に怒られ、2人も他のメンバーの後を追う。


「じゃあスタートは、いつものメンバーで行くから。三神、神門、香威、一色、音無で行く。途中から変化を与えていくためにも、神薙も準備をしておくように」

「「「「「「はい!!」」」」」」


5人は、コートに整列する。


「一年、声出しよろしくなぁ」

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」


神門の気の抜けた声に反して、キレのある返事をする。


「これより、夜桜中対柊木中の試合を始めます!!」

「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」」」」」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「いやぁ、疲れたねぇ」

「だな」

「おい、お前ら!みんなのおかげで、まだ引退をしなくて済んだぞ!!」

「そうっすね」

「受験大丈夫なんですか?」

「はっ!!」


今日の大会、夜桜中男子バスケ部は、優勝をした。


「煉先輩~!!」

「ぐへっ!」


神門の背後から霧崎が飛びついて来た。


「かっこよかったですよ~!!」

「はいはい、ありがとうな」


神門が霧崎を、軽くあしらっていると。


「ほら、とりあえず保護者にあいさつするから並べ」

「はーい」

「はい」


夜桜中の男女共にバスケ部が整列し、応援してくれた保護者に挨拶をする。


「それで、煉先輩」

「なんだ」

「先輩の親ってどれですか?」

「あ?あそこにいる茶髪でロングの眼鏡かけた人だけど」

「ほぇ~。スタイル良いですね。身長も高くて、先輩ってお母さん譲りなんですかね」

「さあな」

「挨拶しても良いですか?」

「何で?」

「息子さんを貰いますって」

「馬鹿なのか」

「これでも学年主席ですよ」

「そうだった」


挨拶を終え、それぞれ帰る準備をしている中、霧崎は、神門の母親に挨拶をしようとしていた。

それも、結婚の挨拶だ。


「じゃあ行って来ます」

「は?っておい待て!!」


霧崎は保護者がいるところに走っていく。


「初めまして。霧崎悠那と申します。煉先輩にはお世話になっております」

「あら、そうだったのね。というか、もしかしてそのリストバンド…」

「はい、煉先輩とお揃いです」

「じゃあ、貴方があの後輩ちゃんね。煉がお世話になっているわ~」

「いえいえ、こちらこそです」


霧崎と神門母が話し合っている中、神門が割り込む。


「母さん、もう帰ろ!!そして霧崎、ある事無い事吹き込んでないよな!?」

「えっと…私たちが付き合っていることですか?」

「何それ!?初耳よ!!」

「奇遇だな母さん!!俺もだよ!!」

「いやいや、先輩。気の無い男の人と一緒に買い物なんて行きませんよ?」

「いや、そうだろうけど!」

「ということでお母さん、息子さんを私にください」

「煉の浮いた話を始めて聞いた上に、こんな丁寧で良い子が…。分かったわ!!煉は、あげる!!」

「あげるな!冷静になれ母さん!!」

「ありがとうございます!!」

「受け取るな!!」


こうして、地区予選は、幕を閉じる。

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