18 配信の切り忘れって……



「へっ、と、ともだち……?」


「日本に来て、こんなに優しくされたの始めてなんです……!」


 ちょっ、えっ、なにが。


「ぼくの日本の友達第一号になってください! お願いします」


 これがワガママ? なんか、もっと色々言われるかなと思ってたのに。

 とりあえず、重要なのは……ましろくんにスッキリしてもらうことだな。


「友達くらいぜんぜんなるよ! ボクなんかで良ければだけど」


「お姉さんが良いんです! お願いします!!」


「うん。よろしく」


 ましろくん友達いないんだ……意外。

 でも、かわいいワガママだなぁ。これで、状況が改善するなら良しだ。

 

「あ、あと、配信者デビューしてください!」


「ええっ?」


「一緒にゲームしましょ!」


 配信者、配信者かぁ……。


「配信者は……えーと、多分、途中で諦めちゃうと思うし……あと、パソコンが古くて出来ないから」


「わ、ワガママを聞いてくれるって! 言いました!」


「いっ……言ったけど……」


 ど、どうしよう……。

 断ったらましろくん傷つくかもしれないし……。


「じ、じゃあ、優勝したら! またワガママ聞いて下さい!」


 涙目で必死に訴えかけられ、ボクは葛藤をした。ぐうう……。

 配信は物理的にできないけど……。お金貯めたら……うん、多分。


「で、できる範囲のことでしたら……」


「やったー! やったー!!」


 パァッと表情が明るくなって、バンザイを繰り返してる。


「じ、じゃあ、頑張って優勝しないとね〜」


 保育士さんが子どもに言い聞かせるような口調で話して、事なきを得た。

 ふぅ。様子見しにきたら、こんな話になるなんて思わなかった。

 

「……」


 って、あれ? なにか忘れてる気がする。


 ――プルルル!


「あ、電話……ごめんね、ちょっと……」


 スマホを取り出して見ると蒼央さんからだ。なんだろう。


『配信! ましろん! 配信切り忘れてる!!!!』


「えっ……?」


 バッと顔を上げてサブモニターを確認してみると、配信中のマークがついてる。

 サブモニターにキャラクターの顔があるとは思ってたけど、別に配信をしていなくても画面に載せる設定をしてるって話を聞いてたから……。

 って──ぼく、配信中って確認して入ってきたんじゃん!!!!!


「ご、ごめん! 忘れてた!! ましろくん! 配信つけっぱ!!!!」

 

「えっ、うわっ、えっ……!! あっ──え、いつからッ」


『トレンドに『#ましろん起きろ』が入ってるから、何事かと思ったら心音くんっぽい声も聞こえてくるし、なにかゲームの話? してるし!! とりあえず、配信閉じて!』


「みんな! 見てくれてありがとうございますー! またね! ハハハ……」


 配信アプリがようやく「配信準備中」に変わった。

 二人で見つめ合う。冷や汗がとまらない。


「これ、やっちゃったかもです……」


「で、でも、個人名出してない……。ましろくん……は、別に一緒だし」


「寝言とか、もしかしたら言っちゃってるかも。アーカイブ……どうしよう」


「…………」


「………………炎上しちゃうと思います……?」


「……うん」


「…………ですよね……」


 結果、アーカイブは一旦、非公開にすることにした。

 けど、SNSのトレンドにも載り、切り抜き動画も出回りだした。

 これでもう消せなくなった。ネットって怖い……。


 


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