16 Vtuberって叩かれやすいよね
なにしようかな。
どこかにお出かけ……もないな。一人でいくのもアレだし。
実家に帰るにして、お、通知がきた。蒼央さんかな。
「…………って、珍しいヤツから連絡きたな」
『かな)聞いたぞ、住み込みのバイトを始めたって? 大丈夫なのか?』
『心音)大丈夫だよ』
『かな)やっぱりわたしも経済学部にいくべきだったか』
『心音)大丈夫だって。で、どうしたのさ』
『かな)昨日、家に寄ったら妹さんにいないと言われた』
『心音)とりあえず、ぼくは大丈夫だから。じゃ』
小学校から一緒の「かな」。社会学部にいったヤツだ。
ボクと違って大学デビューが成功してリア充になった。ズルいぞ。
その後もしつこく連絡がかかってきたので、未読無視。
「あ、おにーちゃん帰ってきた。かなさん来てたよ」
「返信しといた~」
「GW中はママ活はなし?」
「って言われた」
もはや、ママ活ということは否定せまい。
自室に入ろうとすると、体操服のまま朝ご飯を食べている姿が目に入った。
「部活?」
「ンにゃ。動きやすいからこの格好なだけ~」
……たまに蒼央さんも体操着を着てるんだよなぁ。
動きやすいんだよね~と笑っていたが……妹にもその気があるとは。
「なによ、可哀想な人を見る目で見てるなあ?」
「いいや。なんでもないよ。なんでもない」
「なんじゃそら! くォらッ! 待ちやがれッ!」
急いで部屋に上がり、ベッドの上に倒れ込んだ。
ドゴドゴドゴドゴとホラー映画ばりの扉ノック。
「おかあさんとおとうさんいないから夕食どうする?」
急に真面目な話してくるじゃん。
「適当になにか作るよ」
「……おにいちゃんが……?」
「そうだよー。なに?」
「いーや? なんでも~。フフフ」
足音が遠のいていくのを感じながら「なんなんだ」とごちる。
そう思うと、もう1回足音が近づいてきた。
「お兄ちゃん、最近楽しそう! バイト変えて良かったね!!」
それだけ〜と言いながらまた帰っていった。
最近楽しそう、か。まぁ、暇はしてないケド。
(猫のような生活を送るっていう目標は達成してる……気がしなくもないし)
女装も慣れたし、蒼央さんの相手も楽しいし。
うん、不満はない。むしろ満足をしているほどだ。
「でも、ゴールデンウィークなにもすることないのはなぁ……」
SNSを見ると、さっきの『かな』が大学の友だちとどこかに行ってる写真が流れてきたので投げておいた。リア充め! 元陰キャ仲間としては悲しいぞ、ボクは。
「……課題して……料理のバリエーション増やして……買い物もしておくか」
勉強は学生の本分だし、どうせGWが終われば蒼央さんの家での生活が始まるのだ。それに向けて用意をしておこう。うん、それが良い。決して、何もすることがない訳じゃない。
カバンから課題を出し、スマホでましろくんの配信を流しながら机に向かった。
「あ! ましろくんとゲームの話をしたいから、ゲームをするっていうのは」
と思って、すぐにパソコンが古くなってガタが来てるのを思い出した。
「大人しく課題しよう……」
………………
…………
……
『リスナー)最後の建物さ。ましろんのカバー早かったらなぁ』
『リスナー)他のチーム反省会してるけど、しなくても大丈夫そ?』
『リスナー)コーチとか呼んで、本格的にやるほうが楽しいかも!』
『リスナー)てか、ましろんがキルできないとチーム負けるじゃん笑』
『リスナー)雰囲気悪くなるんで、本気でやってもらっていいですか?』
『リスナー)ましろんしか経験者いないんだっけ? きつそ~』
『リスナー)──このコメントはモデレーターに削除されました──』
『リスナー)この調子じゃ、優勝は無理だな。他のチームの配信行くわ』
『リスナー)セカイとモココをカバーしろよ無名』
「…………ごめん、ちょっと、トイレ行ってきます」
『はーい』『おっけ〜』
チームメンバーに嘘を言い、ヘッドフォンを外して、リスナーのコメントを見つめる。
──20チーム中、19位。
有名配信者がチームにいると視聴者が増えるが、その分、様々な意見をいただく。
「もっと、がんばらなきゃ……リーダーは僕なんだから……」
ネットに生きている者に年齢なんて関係ない。
時間を使って見ているコンテンツが面白くなければ叩くのは当然。
それも、有名配信者の時間を使っているのが同じ事務所でもなく、キャリーをしなければいけない存在だとしたら、視聴者にとってこれほどまでに叩きやすい存在はいない。
その日の順位は18位。
ましろのキルポイントだけで、順位ポイントはほとんどないという結果となった。
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