第16話 今こそ腕の見せ所
「ハヤト、大丈夫?」
ひとしきり
バケツの前にしゃがみ込む俺の背中を、彼女が
……
「あぁ。大丈夫だ。ごめんな。メイの方が
口に残る
すると、メイは首を横に振りながら、まるで俺を
「アタシはもう大丈夫」
ホント、彼女には助けてもらいっぱなしだな。
でも、これ以上
さっき見た
「ここがメイの家か。なんていうか、
「でしょ。アタシも気に入ってる」
木材と石材を組み合わせて作られた
現代日本の建物と比べれば、
「これ全部、自分達で作ったのか?」
「そうだよ。お父さんと兄ちゃんが作った。アタシもちょっと手伝ったよ! あの辺とか」
「それはすごいな」
「えへへ」
「さてと、おかげでゆっくり休めたし、そろそろ動くかな。マリッサと
「うん。近くに
「そうか。できれば合流したいけど、近くには居なさそうだな……」
「そうだね」
小屋の外の様子を見て見るけど、2人がいる気配は無い。
まさか、森の奥にまで行ってないよな?
まぁ、マリッサが居ればどんな状況でも逃げ出せそうだけど。
「メイの鼻があれば、2人を探せたりするか?」
「あ、えっと、そ、それは、ちょっと難しいかも」
「そうなのか?」
思い付きで
ちょっと言葉に詰まってるのは気になるけど。
「うん。この辺は……
「なるほどな。それならまぁ、あんまり歩き回るのはやめた方が良さそうか」
とはいえ、小屋の周辺を探すくらいはしておいた方が良いかもな。
なんて考えながら、俺が小屋の外に一歩踏み出した時、背後のメイが何かを口走った。
「ね、ねぇ、ハヤト。ハヤトはさ、マリッサのこと……」
「ん? マリッサがどうした?」
「な、なんでもないよ。それよりハヤト。カラミティが起きる前まで、ハヤトは何をしてた?」
「カラミティが起きる前? そうだな。最後に
「服?」
たまに
逆に今までよく持ったもんだ。それもこれも、マリッサのおかげかな。
異世界人ってのはいろんな素材を調合することで、本当に便利な薬を作り出すらしい。
とはいえ、新しい服を調達するのが
「そう言えば、メイの服ってかなり簡素なものだよな」
「ん、これも自分で作った」
「マジか! なんでも自分で作れるのは
あまりまじまじと見てなかったけど、彼女が身に
正直、ウェアウルフ特有の
「……そ、そんなに見ないで欲しい」
「わ、悪い!」
顔を赤らめてるメイに全力で謝る俺。
なんか、彼女には謝ってばかりだな。
なんて考えてると、メイは小さく呟いた。
「ハヤトの服、ボロボロ」
「そうなんだよ。メイ達と会う前までは、服に気を向ける余裕が無かったからなぁ」
「そっか。あのさ、ハヤト。もしよかったらアタシが……」
「メイ!! ハヤト!! 大変だ!!」
モジモジと足元を見下ろしながら何かを言いかけてたメイ。
そんな彼女の声をかき消すように、小屋の外から
「
「
「お、調子が戻ったみたいだなハヤト。だったら話が早い。2人とも、すぐにオイラに着いて来てくれ!」
何をそんなに
そんな話をゆっくりとする
そうして、少し東に向かって走ったところで、俺は何か変な音が森の奥から聞こえてくることに気が付いた。
「なんだこの音?」
「誰かが戦ってる?」
「さすがメイだぜ! この先で、
「
「問題はそこじゃねぇ! 奴らが戦ってるのは、人間なんだよ」
「なんだって!?」
「人間達はこの先のでかい建物に逃げ込んだらしい。で、そいつらを追ってた騎士達が、その建物を
マリッサが俺達を呼んだ?
ちょっと引っ掛かるな。
俺の知ってる彼女なら、問題事に
わざわざ呼ぶってことは、何か理由があるってコトだろう。
そう考えた俺は、
「遅くなった。状況は?」
「あまり良くないかな」
「デカい建物って、アイオンの事かよ」
「アイオン?」
「あぁ。あの建物の中には色んな店が入ってて……って、こんなこと説明してる場合じゃないな」
彼らは全員エルフのようで、アイオンの入り口の一つを
って言うか、エルフたちがいる場所がアイオンの入り口ってことは、俺達が居るここは、
つまりここは、
いや、カラミティの
「よし。すぐに止めに行くぞ」
「待って。今私達が出て行くのは
「じゃあどうして呼んだんだ!? このままここで見てろってのか!?」
「そうじゃないよ。私も今すぐに止めたいと思ってるし、なんならもう、止めに入ってもらってるから」
「は?」
「私が合図すれば、すぐにでもドライアドが騎士達を追い払ってくれるはず」
「ドライアド……そう言えば、前にも呼んでたな」
「うん。で、合図を出す前に確認したいことがあったから、ハヤトを呼んだんだ」
「確認? なんだよ」
「今あそこに逃げ込んでる人間は、恐らく、ハヤトと同じ世界に住んでた人達だよ。だから、助けた後に私達との
「仲介役? それくらい……」
頼まれなくたってやるぞ。
そう言おうとした俺は、すっかり
「……今の俺が仲介役になれるのか?」
「私もそれが心配だったから呼んだの。自信が無いなら、見なかったことにして逃げる方が良い」
マリッサが俺を呼んだ意味が分かった。
確かに、今の俺の姿は現代日本人からすれば
ましてや、マリッサやメイを引き連れてるわけだ。
簡単に信用されるわけがない。
でも、出来るかもしれないことをはじめから諦めるのは、また別の話だろ?
「やろう。見なかったことにするのは、さすがに気が引ける。それに……」
この腕がどんな見た目になろうとも、俺が俺として生きて来た時間は
「元営業マンとして、今こそ腕の見せ所だろ」
「分かった。それじゃあやるね。ドライアド、お願い」
そんな俺を見て、マリッサが指示を出すと同時に、入り口を包囲するエルフの騎士達の足元から、多くの
即座に剣で
「前にも見たけど、マリッサは
「ガルーダとドライアドだけだよ」
「……そうなんだ」
「何か
「いや、無いです。ありません。だから、杖をこっちに向けるのはやめてください」
本当に
気まずい空気の中、俺がマリッサの
「ふふっ……あ、ごめんなさい」
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