第6話 今の君に必要なのは
どれほど世界が変わったからと言っても、夜の街に
それは俺にとってだけの話じゃなかったらしく、
「
「オイラだけなら、逃げ出せるかもだけど」
「マジかよ。さすがだな、
「まぁな……って、そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
「そうでもないさ。
「おい! 本気で
「じゃあどうしろって言うんだ!? 目の前には正気を失った狼人間、周りはゴブリンに囲まれてる。そんな状況で、ただの一般ピーポーである俺に、何ができる?」
「オイラは逆に、お前さんが、その一般ピーポーだからこそ、何とかなるかもしれないと思ってるけどな」
「……マジで?」
「まぁ、確実な話ってわけじゃないけど……でも、見て見ろよ、ゴブリンもあの
対するゴブリンも、少しだけ彼女の様子に
「まさか、弱い俺は
「
「なるほど、でもそれって、ゴブリン相手に彼女を戦わせるってことだよな? 大丈夫なのか?」
「何が?」
「あの子が
俺の言いたいことを理解したらしい
「それはそうだけど……って、そう言えば、あの
何を
そんなことを伝えようと口を開いた俺は、直後、
「だからっ!……あれ?」
あの
だけど、
まるで、
「さすがというか、なんというか、ファンタジーだな」
「何言ってんだ? それより、そろそろ始まりそうだからな、心の準備は良いか?」
「そうだな。
そう言った俺が、立ち上がって体勢を整える前に、彼女が動いた。
低い
同時に巻き起こるゴブリン達の
「あっちだ! ゴブリンが
「分かってる!!」
走りながらも、俺は視界の
しっかりとは見えてないけど、彼女は俺が想像していた以上に
そうして戦ってる彼女の姿は、どこか
「考えすぎか?」
「
「分かった!」
取り
そう考えて、
「っ!?」
影を見た瞬間、俺は
結果的に言えば、それは正解だったらしい。
「くそっ……痛ってぇ」
地面を転がった際に、落ちてた石を
かなり痛い。
だけど、そんな痛みがどうでも良くなる光景が、目の前に
俺を
「
「大丈夫だ!
「でも!」
「良いから行け!!」
飛んでくるゴブリンをなんとか
なに格好つけてんだろうな。
でも、
彼女がゴブリンを投げつけ始めたことで、周囲にいたゴブリン達の視線も自然と俺に集まり始める。
これはもう、本格的にダメなやつだな。
手にしてる
ましてや、これだけのゴブリンの群れを相手にしても戦えるような
「今の俺に出来ることがあるとすれば、それは死に方を選ぶくらいだよな」
ゴブリンに殺されるくらいなら、まだ彼女に殺された方がマシだ。
名前も知らないような女の子相手に何を言ってんだって話だけど、この状況なら誰だってそう思うだろ?
「良いぜ、色々とぶちまけたいことがあるんだろ? 俺で良ければ全部受けてやるよ。その代わり、少しで良いから、
「ガァァァァッ!!」
「ははは、そっか。全力じゃないと意味ないよな」
せめて、名前くらい聞いておけば良かったかなぁ。
そんなことを考える俺の視界の中で、彼女が
振り上げられる右腕。
彼女の右腕に反応することもできないまま、俺は
「
死を
そして、声の聞こえて来た頭上に視線を投げた。
「エルフ!?」
4日前にガルーダに乗って飛び去って行ったあのエルフが、俺の背後のビルの屋上に立ってる。
身に
と言っても、地面までの落下途中でどこからともなく現れたガルーダに
そんな彼女は、無言で俺の元に歩み寄ってくると、これ見よがしに告げる。
「これで貸しは無しだよね?」
「あ、あぁ……」
「それじゃ」
だけど、彼女はそのまま飛び去るつもりは無いらしい。
目を赤く光らせながらも、エルフに
彼女の周りには、ご
そんな彼女の目の前に立ったエルフは、口を開くことも無いままにガルーダに目配せをする。
その様子を見た俺は、思わずエルフの前に飛び出した。
なぜか、とてつもなく
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今、何をしようとしてる?」
「何って、その子は危険だから、ここで
「いやいや、
「何を言ってるの?
「そうなんだけど、そうじゃないっていうか。これには深い
「……それは、どういう意味?」
「事情は良く知らない。だけど、彼女はついさっき、とても大切な人を失ったばかりなんだよ。だから」
「……そう」
俺の
彼女も何かしらの事情を抱えているのかもしれないな。
とはいえ、今は
すぐに後ろで
「ふぅ……マジで死ぬかと思った。でもまぁ、こうしてお互いに生きてるんだ。これは何かの縁があったってことだよな」
「グルルルル」
「まぁ、落ち着け……って言われて落ち着けるとは思えないから、一方的に話すぞ。俺の名前は
「グルル……」
「
「……」
「事情も何も知らない俺が、そんな
俺を
それと同時に、
そんな彼女の頭を、
「だから、君の話を俺に聞かせてくれないか? 何があったのか、どれだけ
「うぅ……」
そんな彼女の頭から俺が手を
振り返ると、エルフがそっぽを向いて立ってる。だけど、俺達の会話には、しっかりと耳を
「……メイ」
「ん? どうした?」
「アタシの……名前、メイって言うの」
「そうか、よろしくな、メイ」
「……うん」
「というワケだ。なんだったら、アンタも
「……」
どこか
さすがに
なんて俺が考えてメイに向き直ろうとしたところで、不意にエルフが口を開く。
「……マリッサ。それが私の名前だよ」
「そうか。ありがとう、マリッサ。それと、よろしくな」
「話を聞くだけだよね? まぁ、別にいいけど」
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