第4話 告げることもできないまま
アタシ達ウェアウルフは、
とっても、幸せな生活。
お父さんもお母さんも、たまに
最近生まれたばかりの弟を、家族みんなで
弟はとってもかわいいんだよ?
その笑顔が
晴れの日は、お父さんとお母さんが狩りに出かけることが多いから、
あ、でも、初めて狩りに出た時も楽しかった。
お父さんとお兄ちゃんと、そしてアタシの3人。
まぁ、お腹は
雨の日に、お母さんの
お母さんは狩りも上手だし歌も上手だし、お父さんが
……もう一度、皆に会いたいな。
そう思うと、止めどなく涙が
家族と暮らしてた毎日が、もうどれだけ前の事か、覚えてない。
ティンベルの森から出て、誰かに助けを呼ぼうと思ってたのに。
森を抜けた先にアタシが見た世界は、知らない場所だった。
木よりも背の高い
目の前に広がった世界に、アタシは固くて冷たいという
それでも、アタシは先に進むしかなかった。
……家族の元には戻れないから。
あの日、アタシたちの住んでた家の近くに、見たことも無いほど大きな何かが落っこちて来たんだ。
炎を
ものすごい音を立てて落ちて来たそれは、そのままピクリとも動かなかったの。
そうしたら、お父さんとお兄ちゃんがね、様子を見に行こうって。
お母さんは止めてたんだよ?
だけど、アタシ達の暮らしを
結局、アタシが弟の
……止めればよかった。
行っちゃ嫌だって、止めればよかったのに!!
そうすれば、家族みんなでこうしてドラゴンから逃げ出せたのに……。
お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも。
動かなくなったはずのドラゴンに、焼き殺されちゃった。
残されたのは、アタシと弟だけ。
皆が炎に包まれるのを見て、アタシは
そしたら、聞こえて来たんだ。
お母さんの声が。
逃げなさいって。
だけどアタシ、お母さんの言うことを聞かなかったんだ。
お母さんがまだ生きてるって、助けなきゃって……。
バカだったから。
本当にバカだったから。
そのせいで、そのせいで、弟が……。
「ごめんね、ごめんね……痛いよね。すぐに、アタシがなんとかするから!!」
腕に
そんな弟に謝りながら、アタシはただ走った。
腕も足も、
止まるわけにはいかないから。
弟まで失ってしまったら、アタシは、アタシは……。
どこで生きて行けばいいの?
冷たくて
少なくとも、2回夜を越えてる。
だけど、弟を助けることが出来そうな場所とか人と出会えてない。
目にするのは、
もう、ダメなのかな……。
そろそろ日が暮れそうだし、どこかで身を隠さなくちゃいけないのに。
その場に立ち止まって、全部
そんな時に、アタシの耳が聞き
それは……そう、歌みたいな声?
「誰か、いる?」
思わずそう
魔物だったら、どうしよう。
そんな不安を振り払うように、がむしゃらに走る。
もしかしたら、この時のアタシはもう、全部
そうして、声の元に
間違いない。
目の前のこの建物の中から、さっき聞こえた歌声が聞こえてくる。
お母さんの歌に比べれば、
そんな歌の
アタシの目の前にあった壁が、突然開かれた。
そして、野太い歌を
「……って、うぉい!! 嘘だろ!?」
「どうした
「違う! これは……彼女は、
「何でだ? そいつが魔物じゃないなら、別に構う必要なんて―――」
「バカ
「顔? それは一体どういう」
「良いから、中に入るからなっ!!」
「ま、待って」
アタシの目の前で
そんな彼らに助けを求めようとしたアタシは、思いのほか自分の声が
こんな声じゃ、助けを求める事もできないかも。
そう思って、もう一度大きな声で呼びかけようとしたアタシは、だけど、それ以上の
「何やってんだ!? 早く中に入れ! そんな
「へっ!?」
言われるまま、そして背中を押されるがままに、私は前に歩き出す。
そうして、何も告げることもできないまま、建物の中に足を踏み入れることになった。
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