後編①
――翌日。
「「「「「聖女様! おはようございます!」」」」」
「おはよう皆」
私はいつも通りに起き、彼らと挨拶を交わしていた。
大好きな乙女ゲーでしか見た事がない見目麗しい青年達が私に対して、笑顔で接してくれるのがとっても嬉しい。
「ねえ、侵入者はどうなったの?」
昨夜の侵入者の件を聞くと、皆、厳しい顔つきになりリーダー格の青年――昨夜、私の部屋を訪ねてきた青年が口を開いた。
「それが未だに捕まっておりません。ですが安心してください、何があっても僕達は貴方を守ります!」
「本当? 嬉しい!」
どうやら侵入者はまだ捕まってないみたい、だけど、彼らが守ってくれるなら安心だ。
私は安堵しながら私の為に用意してくれた朝食を食べ始めた。
それからいつものように過していたら。
ちょうどティータイムの時間に。
「儀式を? これから?」
世界を救う為の儀式を行うことを告げられた。
どうして急に・・・・・・。
「侵入者は我々の世界を救う為の儀式を邪魔するために侵入したと考えています」
疑問を口にしていたのか、目の前にいる彼は美しい顔を申し訳ないといった表情で話してくれた。
侵入者の件で儀式を早めることにしたみたい。確かに大切な儀式を邪魔されたら世界を救えないもの。
「それで早めに儀式を行うことにしたのね」
「はい。急で申し訳ありません。ですが侵入者から貴方様を守るためでもあります」
「それなら仕方ないわ。聖女として頑張るわ!」
不安はあるけど仕方ない。
世界の平和のために頑張りますか!!
そう意気込み、彼らに案内されながら儀式の場へ向かった。
「此処が儀式の場なの?」
案内されたのは地下だった。
薄暗いしジメッとしてるし石造りのせいか寒く感じる。
本当に儀式の場なの?
「この扉の先に儀式の場があります」
そう言われて奥を見ると赤い扉が。
儀式の場は扉の先みたいね、緊張してきた。でも、頑張らないと世界の平和が!
ドキドキしながら扉を開けると。
ドンッ!! と強く背中を押された。
いきなりだったから受け身の体勢をとれず思いっきり石の床とぶつかる。
痛みに堪えながら私を押した人を見ようと後ろを見たら、扉が勢いよく閉まり、ガチャリと鍵をかけられる音が聞こえた。
「え? なに? なんなの?」
訳が分からない。
私を押したのも扉を閉め鍵をかけたのも、きっと彼らだ。
私にあれだけ優しかった彼らが急にどうして、そんな行動を・・・・・・?
困惑しながらも周りを見渡す。
暗すぎて何も見えない。
辺りを確認するように手を動かすと何かに触れ、私はそれを見て悲鳴を上げた。
触れたもの、それは人間の骨だった。
立ち上がって何度も扉を叩く。
けど、扉の先に居るであろう彼らは助けてくれない。
それだけじゃない、彼らがクスクスと笑っている声が聞こえた。
この状況を彼らは楽しんでる? 嘘でしょ!?
「お願い! 開けて! 開けてよ!!」
ドンドンと扉を叩く手が痛くなるけど構ってなんかいられなかった。
だから私は気付かなかった。
私の後ろに巨大な蜘蛛が居ることを。
「そろそろかな?」
「今年の生贄も女王様は喜んでくれただろう」
「これで今年も沢山の子を産んでくださるだろう」
――ギャアアアアアア!!!!!!
五人の青年が嬉しそうに話している最中。
悲鳴が上がった。
「さっきの悲鳴は・・・・・・?」
「あの女のか、いや、あの声は!!」
「女王様!!」
悲鳴を聞いた青年達は扉を開け、中に入る。
其処に居たのは。
「あんた達の大切な女王様の命、頂いたわよ」
赤い髪の女――カエデとその後ろに炎によって焼かれ、事切れている女王蜘蛛だった。
「ああああああ!!!!!!」
「女王様が!!!!!!」
「よくもよくもよくもぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
悲痛の声を上げ、憎しみの声をカエデにぶつけ、青年達は本来の姿、蜘蛛のような姿をした異形へと変え、カエデに襲いかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます