中編
「聖女様!! 聖女様!!」
ドンドンと強く扉を叩く音に私は何事かと扉を開けると見た事がないほど怖い形相をしたリーダー格の青年が立っていた。
「夜中にどうしたの?」
「大変です! 何者かが侵入したようです!」
「ええ!? 侵入者!?」
「今、手分けして侵入者を捜している最中です。僕は聖女様の無事を確認しに参りました」
「そうなんだ、私は大丈夫だよ。他の人達は?」
「皆は大丈夫です。聖女様が無事で何より、それでは」
「頑張ってね」
そう言うと青年ははい! と返事を返すと走って去って行った。
その姿を見て。
「侵入者がまだ捕まってないのに守るべきはずの聖女の傍に居ないのは護衛失格じゃない?」
私の影から現われた侵入者である赤髪の彼女は笑った。
――話は少し遡って。
ふわりと私の目の前に現われた赤髪の女性、手には血がベットリとついたナイフが。
それを見た私は落ちてきた異形の怪物がこれで殺したのだと考えると同時に口封じで殺されると思い、助けを呼ぼうとしたけど素早い動きで口を塞がれてしまった。
――殺される!!
そう思って、目を瞑ったら。
「安心して私は貴方を殺さない。だから、彼奴らを呼ばないで」
優しい声色で話しかけられ、塞いでいた口を解放してくれた。
「ほ、本当ですか?」
「ええ、本当よ」
彼女はナイフに付いた血を拭き取り、鞘に仕舞うと両手を上げた。
私に危害を加えるつもりはないという意思表示のようだ。
「もう一度言う、私は貴方に危害加えるつもりはない」
「・・・・・・・・・・・・貴方は何者なんですか?」
事が起りすぎてどう処理していいか解らなかった私は彼女が何者なのか聞いた、というかそれしか考えられなかった。
彼女はふふっと安心させるように笑い。
「私の名はカエデ。百年ぐらい魔女をやってるわ」
そう名乗った。
私の様子を見に来た青年が去り、姿を現したカエデさんは。
「貴方はこの世界とは別の世界から喚ばれた聖女様で間違いない?」
私にそう質問してきた。
素直にはいと答える、今更、嘘を言う必要はない。
それにカエデさんは彼らよりも信頼できると思ったのもある。
「それじゃあ、貴方が今年の聖女様ね」
質問に答えた後、カエデさんはそんな事を言ってきた。
今年って事は。
「今年の? 去年も私のように喚ばれた聖女が居たんですね?」
「居たわ。此処にいる奴等は毎年、聖女を喚びだしているのよ」
「毎年!?」
彼らは言った、私はこの世界を救う為に呼び出したって。
毎年、呼び出してるって事は一年もしない内に聖女は居なくなってしまうまたは世界を救う為に力を失って聖女じゃなくなるってこと?
いや、もしかしたら・・・・・・・・・・・・。
私は嫌な想像をした。
「・・・・・・・・・・・・カエデさん、もしかして聖女じゃなくて生贄ですか?」
「もしかしなくてもそうよ。彼奴らは生贄を聖女として祭り上げた後、捧げるの」
私の質問にカエデさんは迷うことなくハッキリと聖女として喚ばれたわけでなく生贄として喚ばれた事を教えてくれた。
聖女ではなく生贄として喚びだした存在なら、彼らの行動は納得できる。
全ては私が逃げないように生贄であることを悟られないようにするためだ。
侵入者がまだ捕まってないにも関わらず守るべき聖女である私を放ってサッサっと去って行ったのも私よりも大切な存在、生贄を捧げる存在を優先したんだ。
そこまで考えて、私は彼らにいつか殺されるのだとわかった。
逃げなきゃ。だけど、どうやって逃げればいい?
私は縋るようにカエデさんは見る、今の私に縋る相手が彼女しかいない。
「その様子だと、貴方には彼奴らの毒が効いてないみたいね」
「どく?」
「後で教えてあげるわ、今は貴方を助ける方が先よ」
ニヤリとカエデさんは笑うと私に液体が入った小瓶を渡してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます