2話目
時々、同じ夢を何度も見ることがあった。
夢は、私が20歳以降に見たものばかりであった。
何度も見る夢の5つ目は、小学校の頃に住んでいた家のそばにあったキリスト教会の話である。
キリスト教会は子どもの勧誘のために、時々、お遊戯会やらお話会やらを開いていた。
小学校の時に、友だちと近くのキリスト教会のお遊戯会に行ったことがあった。しかし、勧誘のためのお遊戯会であったので、その後、勧誘を受けた。そこで日曜日に来てねという。最初の数回はいわれた通りに教会に通った。
しかし、献金で毎回お金がかかることが気になった。私は吝嗇家であったので、回ってきた献金箱に10円を入れたところ、係の者に笑顔で「今度は100円を持ってきてくださいね」といわれた。だんだんとそのことが負担になってきた。
一方、一緒にキリスト教会に行った友だちは熱心になっていった。
ある日、キリスト教会内で、新しく入った子たちで、お遊戯会を開きましょうといわれた。楽しいよね、楽しいよねと大人が語る。こうして、新しい勧誘を繰り返していくのだと私は見ていた。それを見ていた私は、だんだんと冷めていくのを感じた。
実際にお遊戯会では、子どもたちに役を割り振っていた。それに向けて、演劇の流れ、セリフのある子はセリフを覚えなきゃいけなくなった。
その頃には完全に私は冷めきっていたので、わざわざキリスト教会に出向く時間さえもったいないと思った。
ある日、キリスト教会の前を通った時、父親にいわれた。
「もうキリスト教会には通わないのかい?」
この頃はちょっとためらっていた。結論を出すのもためらっていた。
「…うん、行かない」
と私は答えた。
父親が聞いた。「教会に行かないと後ろめたくならないかい? 何で行かないのかい?」
「行く度にお金を献金しなくちゃいけない。しかも毎週100円だよ? 高すぎるよ」
しょせん、小学校1年生の答えである。「お菓子買う方がいいよ」
父親はしばし黙って、
「子どもには信仰心はないんだな…」
といっていた。
繰り返し見る夢の中では、キリスト教会のお遊戯会の練習を何度も何度もしていた。
あと何日で本番が来る。夢の中で私は焦っていた。演劇の流れを覚えなきゃ、セリフを覚えなきゃ…。
何年も前にキリスト教会に通わなくなったのに、何度も何度も同じ夢を見る。
この夢は、高校入学ぐらいまで続いた気がする。
何度も見る夢の6つ目は、ある神社からスタートする夢である。
その神社は、過去に一度だけ寄ったことのある検見川神社であった。神社には偶然、辿り着いた。検見川神社には初めて訪れたので、神社の石碑を見て、ここが検見川神社だと理解した。
私は吝嗇家であるので、定期券外の場所へ行く時には極力、徒歩で行くようにしていた。検見川神社のある最寄り駅は定期券外にあった。しかも、当初は立ち寄る予定のない地域であった。
実際に参拝した日は、別の場所で人と会う約束があった。あとで地図を見て確認したら、約束の場所に行くのに、だいぶ遠回りをしたと思った。
検見川神社で拝んでから、人との約束の地へ向かう。腕時計を見て確認したら、約束の時間にギリギリ間に合うかどうかの時間であった。なので、検見川神社から全速力で約束の地へ走り出した。
前にバイト先で、検見川神社の話を聞いたことがあった。
検見川神社はパワースポットであるという。ここは怖いという噂を聞いていた。
私は何が怖いのかを、その人に聞いてみた。その人は「怖いという地元民の噂を聞いたことがある」という。それに「検見川神社に祀られている神様が強力」だという。
当時は、その人には、それくらいの理由しか聞いていなかった気がする。
実際に検見川神社へ行くと分かるが、検見川神社には長い石段がある。そこを登ると社殿が見えてくる。
夢の中では、検見川神社の石段の下から約束の場所へと走り出す夢であった。
映画のフィルムが回り出して風景に浮かび上がる。カタカタと効果音はなかったが、フィルムが大きく上下に広がり、都会の高層ビル群を映し出していた。
私は都会の高層ビル群の中を猛ダッシュしていった。約束の場所に約束の時間に間に合うか間に合わないかといった感じである。
夢の中では、その場面を何度も何度も繰り返し見ていた。猛ダッシュした先にあったのは、今流行りのお洒落なカフェである。
実際に私が検見川神社を訪れた日には、その後、こんなにお洒落なカフェで人との約束はなかった。
現実では送別会であったが、夢の中ではまるでデートの待ち合わせのようだった。
先日、数十年振りに検見川神社を訪れた。
実際に検見川神社の石段の下から、約束の場所の方向を見てみた。
そこからは、遠くに高層ビルが見えるだけで、何とも味気ない辺境の地の風景が映し出されていた。
何度も見る夢の7つ目は、どこかの土地の風景で広い田んぼの畦から始まった。
全体的に背景が白く、雪が降った後のようであった。
夢の続きは、そこに重機が置いてあった。
その夢の続きは、田んぼのような広いところに重機が入ったみたいで、田んぼをならしたようになっていた。田んぼのような広い跡地は、白い砂が平らに綺麗に敷き詰められていた。
画面が赤く見えた。赤いスポットライトのような色の電灯がならした土地を照らし出していた。
この夢は何度も見た。場所も分からない。でも、夢を見る度に場面が進行していくのは確かだった。
と、同時に何をいいたいのかが一番分からない夢だと思った。
ただ何となくであるが、むかし住んでいた土地だろうと思った。
現実の話である。
私の家の玄関を上がったところに、知らない間に白い土が積もっていた。
上を見上げてみた。別段何にもない。別に土が上からこぼれてきたわけではなさそうであった。
…片付けなくちゃ。
とりあえず、箒とちりとりで土を片付けた。
数日後、また、同じ場所に白い土が積もっていた。
…まただよ。掃除をしたのになぁ…。
父親に、
「ここに土を盛った?」
と聞くと、
「知らない。…何これ?」
といった。
「さぁ、何だろう?」
私はそれしかいえなかった。
その土は、夢の中で見た土地の砂の色と似ていた。
【追記】
検見川神社(千葉県千葉市花見川区)
https://www.kemigawa-jinja.com/
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