26. 移動してキャンプファイヤー

 サバンナの夜を、月明かりを元に、皆で歩いて進むのは危険極まりなかった。


 プテラノドンは寝たがるし、龍者の実は俺がかじったのがあるが、これ以上は無駄にできなかった。俺としては、もっと龍者の実をくすねてくるべきだったのかもしれない・・・と反省した。


 若き伯爵は、焼いた野鳥の肉をむさぼるように食べ、分けてあげた水もごくごく飲んだ。そして、どこで松明草とやらを見つけたかを俺たちに教えてくれた。


 王の印のある岩の泉とは反対側に、偶然生えていたそうだ。しかし、あそこには狼もライオンもいるよねー。危ない所でなんでそんなに生き延びられるのか、伯爵ってとことん強運だよね、と俺は内心感心した。ありえないんですけど。


 月明かりで見ると、松明草はボワッと明るく光って見えるそうだ。伯爵はその明かりに驚いて手に取ってみて、一本引き抜いたそうだ。引き抜くと明かりは消えてしまったそうだ。で、ポケットにそのまま入れてすっかり存在自体を忘れていたそうだ。


 俺のカメラアプリが認識した松明草は、子供たちのカメラにも、他の誰のカメラにも無反応だった。龍者の実の時と同じように、ゲームのルールは、一人一松明草ということらしかった。


 となれば話は早い。


 子供たちをテントで寝かせて、大人の俺と、ナディア姉さんと、ジャックで代わりばんこに焚き火の番をしながら朝を迎える事にした。伯爵は心身ともに疲れ切っていそうだったので、すぐにテントで寝かせた。ナディア姉さんがまず火の番をすることになり、俺とジャックも皆と一緒にテントの中で雑魚寝をした。


 サバンナの大地は微かな虫の音やそよ風が草を鳴らす以外は、ほぼ無音で、天井は一部網になっていて、落ちてきそうなほどの満点の星空が見えた。


 俺は疲れていたのでぐっすり眠った。おそらく明日の朝になったら、俺の龍者の実効果は薄れているだろう・・・でも、ナディア姉さんがみてくれているという安心感で、俺はぐっすり眠った。

 

 サバンナのテントの中は、最高の寝心地だった。あー、時々、プテラノドンのグフっといういびきのような寝言は、夢の中でも聞こえていたけどね。


 ジャックから俺が起こされたのは、もう夜明け前だった。


 ナディア姉さんとジャックは俺をだいぶ寝かせてくれたらしかった。俺は感謝して、焚き火の番をしながら、遥か地平線から太陽が登る景色を感動しながら眺めていた。コーヒーがあったら最高だなと思いながら、いや、命があるだけマシだな、とも思い、なんだか宝物をもらったような景色だなーと思っていた。


 田中さんは今、何をしているんだろう?とふと思ったが、俺が今何をしているか知ったら、きっと信じられないって思うだろうな・・と思ったりして、一人でニヤニヤしていた。


 朝になり、子供たちが起きてきた。伯爵もジャックもナディア姉さんも起きた。ナディア姉さんが持っていたチョコを俺たちは全員で食べた。そして、ナディア姉さんが仕留めた野鳥をまたみんなで焼いて分け合って食べた。


 すっかり明るくなり、テントをたたみ、テントをプテラの背中にロープで止めて(ロープもナディア姉さんは持っていた。この人何なの・・・本当に)、一行は歩き始めた。


 先頭はピーター、伯爵、ジョージア、レオ、サファイア、ダッカー王子、俺、ジャック、ナディア姉さんの順番で、急ぎ足で歩いた。昨日テントを張る前に水をピーターとレオとくみに行った時には何にも出会わなかったから、昼間は何にも出会わない確率があると俺たちは思っていた。


 読みは当たった。

 

 俺たちは、岩場をぐるっと回って、泉とは反対側まで歩いた。確かに似た草があるようだが、カメラアプリは何にも反応しなかった。


 ミッションは、月明かりで松明草をカメラアプリに認識させよだったよね、と皆で改めて思い出して、俺たちはまたテントを張った。


 ただー、ライオンとか狼とかきっといるんじゃない?と言うことで、早速またナディア姉さんとジャックが火を起こして昼間から大きな焚き火を作った。キャンプファイヤーみたいだ。


 俺は、プテラノドンに乗って、岩場の向こうの泉に飛び、プテラノドンに乗ったまま、何とか水を水筒3つ分くんできた。ライオンとか狼はうなりまくっていたけどね。。


 そして、野鳥だけで命をつなぎ、皆で夜を待った。プテラノドンはまたテントの横で眠り始めた。


 月明かりが出て、やがて辺り一面がボワーっと明るくなった。


「やったぞ!」小声で皆歓喜の声を出した。そして明かりの方に歩み寄ろうと全員が歩こうとした。


「シーっ!」そのとき、ナディア姉さんがそう皆を制して、さっと銃を暗闇に向けた。今度は・・・


 うぎゃあ!!!!


 

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