24. テント
サバンナの夜は、星空が綺麗で、辺りに風がかすかに吹き、獣にいつ何時襲われるかもしれないことを除けば、とんでもなくロマンチックで最高だった。
俺たちは、サバンナにテントをはり、火を起こし、弓矢で鳥を仕留め、川で魚を取り、焚き火であぶって食べた。泉から水を汲んできて、それを代わりばんこに飲んだ。
ここまでの流れはこうだ。
ダッカー王子のUFOに乗り込んだところまでは前回と同じだった。しかし、ロボットのエメラルやUFOにナディアとジャックが大興奮している最中に、例の「ぶつかるー!」という瞬間が訪れた。
そう、「前を見ろ!エメラル!」
ダッカーが突然すごい声で叫び、3人の子供たちとサファイアが前を見ると、UFOはいつの間にか高速スピードで飛んでいて、真正面に大型トレーラーが迫ってきていた。ぶつかる瞬間に悲鳴をあげて、床に腰を抜かして座り込んでいた俺が声にならない悲しげな悲鳴をあげる、という局面だ。
前回通り、巨大なボタンが現れて、今度はジョージアは迷わず左のボタンを押した。だよねー。また龍者の実ってそれはないよなーっと俺だって思った。
左のボタンには「サバンナに戻ってリプレイ」、
右のボタンには「飛車で宇宙戦争を経て龍者の国に進む。ライフ マイナス1」
その瞬間、全員、サバンナに放り出された。次の巨大文字が現れて放り出される瞬間に、次々にエメラルにまた高性能カメラがついたバングルを頭にはめられた。今度は、ダッカー王子とサファイアも投げ出された。
「テント1つ、ランプ、水を貯める水筒3つが与えられます。」
「ミッションは、松明草を月明かりの中でカメラアプリに認識させること。」
まず、弓矢で野鳥をディアナが仕留めた。ディアナ姉さんは、作家って感じの人じゃあ全然なかった。壁をかけ上がってからの空手のつきをしながら飛び降りてくるわ、たくましく弓矢を射って野鳥を片手に歩いて戻ってくるわ、もうかっこ良すぎて、正直惚れた。。
ジャックはカウボーイと聞いていたが、川で素手で川魚を取ってきた。ジョージアが手際よく、鳥と川魚を棒の切れ端で串刺しにして、あぶった。
俺は、龍者の実効果を存分に活かして、泉で水を汲んできた。ピーターとレオと一緒に行って、ライオンと狼に追われたが、プテラノドンを呼んでギリギリ逃げた。
今回サバンナに放り出された地点は、俺らの見解だと、泉のより近くだった。バッファロー通過地点でもなく、チーターに狩られる地点でもない。
プテラノドンに乗って、俺が水筒に水を汲んでテントに戻ってきた時、ナディアとジャックは、口をあんぐり開けて、俺をみた。
「いやあ、話せば長いんだけどー。」と言いながら、ゲームの先輩づらをして、前回は右のボタンを押して龍者の国に進んだことを、俺は得意げにナディアとジャックに語った。だって、こんな話自慢したくても、できる相手なんて、限られるからさー。
そういえば、焚き火は、きりもみ式でナディアとジャックが火を起こした。ナディア姉さんはなぜかこういった事に非常に手際が良かった。
テントは、火を起こした後に皆ではった。その場所では、すぐには獣に追われないということが何となくわかった時にテントを張ったのだ。
サファイアとダッカー王子は、全くといってほどサバイバルに疎かった。唯一、ジョージアとジャックが川魚を捕まえようと躍起になっているとき、目ざとくカバの親子が近づいていると気づいて、ジョージアとジャックに逃げてこいと合図をしたぐらいだった。
逃げてー!
フンを吹き付けられるわよー!
とか何とか必死にいっていて、俺は笑ってしまった。
あ、そうそう、焼いた鳥や魚を食べながら、俺たちは試した、試した。
「いでよ、ドブネズミ!」とピーターが言ってみたが、全く効果はなかった。タスク消化しないと、食料をゲットしても解放されないのはこれで分かった。
夜になると、テントの脇の焚き火で獣が寄り付かないことを祈りながら、星あかりの下で、俺たちは頭のカメラアプリを地面に向けてうろうろ彷徨い歩いた。松明草がなんだか分からないが、とにかくカメラアプリが「認識しました」と言わない限りは、正体が分からないのだ。
プテラノドンは、夜は飛んでくれないらしかった。お願いしても、龍者の国のように星空の下を飛ぶと言う都合の良いことをしてくれなかった。真っ暗になると、ひたすらテントの脇でプテラノドンは眠り始めた。
ナディア姉さんが突然皆に「シーっ!」と合図をしたのはそのときだった。
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